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「政治の海」尖閣、石垣漁師「近づけぬ」 中国船警戒

基地のある島 沖縄の風景

祥芝中心漁港を出港する中国漁船(16日、中国福建省石獅市)=共同

沖縄本島から約410キロメートル離れた石垣島(沖縄県石垣市)。島は人気のビーチリゾートであると同時に、尖閣諸島を行政区に抱える国境の町でもある。好漁場とされる尖閣周辺海域では近年、中国公船の動きが活発で、休漁期間が16日に明けたことから中国漁船の出現も懸念されている。緊張が高まる海を地元住民はどう感じているのか。現地を取材した。

「漁協の船であの海に行く船はいないよ。メリットよりもリスクの方が大きいから」。8月上旬、八重山漁業協同組合(同市)を訪ねると、専務の伊良部幸吉さんが尖閣周辺での漁について静かに語った。

黒潮が流れる尖閣周辺海域はマグロやカツオ、イカのほか、沖縄を代表する高級魚アカマチやミーバイなど「どんな魚もとれる好漁場」(伊良部さん)とされる。だが、ある関係者は「いま石垣から行くのは、尖閣は日本領土だと主張する目的の船くらいだ」と語る。

一般漁船が遠のいた理由の一つが中国公船の存在だ。2012年の日本政府による尖閣国有化以降、中国公船は領海侵入などの活動を活発化した。今年4~8月には111日連続で尖閣周辺の接続水域内に入り、国有化後の最長を記録。7月には中国公船が30時間以上領海内を航行し、付近の日本漁船に接近した。

日本政府の抗議に対して、中国側は尖閣は中国固有の領土だと主張し「抗議は受け入れられない」と回答する応酬が繰り返されている。

石垣から尖閣までは約170キロメートル離れており、漁民にとって漁船の燃料が高騰した影響も大きい。一方で魚価は低迷。大型船で数日かけて漁をしなければ採算はとれない。尖閣周辺は漁船が安心して操業を続ける環境にはないという。

尖閣周辺での漁の現状について説明する八重山漁協の伊良部幸吉専務(沖縄県石垣市)

もう一つ伊良部さんが明かしたのは海上保安庁への配慮だ。海保は尖閣周辺に巡視船を張りつけ、常時警戒にあたっている。

地元漁船が尖閣周辺で漁をする場合、約1週間前に海保に連絡を入れる必要がある。出港後は海保船舶が併走して警備する。「厳しい警戒体制の中、さらに海保の任務を増やしてしまっては申し訳ない」という心理が地元漁師に働き、漁を控えるようになったという。

こうした中、中国当局が自国漁民に設定した東シナ海の休漁期間が今月16日に明けた。東シナ海に面する福建省石獅市の祥芝中心漁港では同日、多くの漁船が黒煙を上げ、爆竹を鳴らして出港する姿が確認されている。

16年8月には200~300隻の中国漁船が尖閣周辺海域に押し寄せた。日中関係が改善基調だった17年以降は落ち着いているものの、今年も同様の事態が起きる可能性はある。伊良部さんは魚が乱獲されれば「周辺海域の生態系にも影響してしまう」と不安そうに話した。

大型巡視船「たらま」は全長96メートル、総トン数は1500トン(沖縄県石垣市)
最前線の海保、警備増強し警戒
石垣市中心部に近い港湾に立地する石垣海上保安部の桟橋には8月上旬、複数の大型船が停留し、エメラルドグリーンの海の上で威圧感を放っていた。尖閣警備の中核拠点だ。
 同保安部が所属する第11管区海上保安本部(那覇市)は近年、国境警備のため急ピッチで拡張され、人員も管区全体で約1880人と海保の全管区で最大規模となった。2016年に大型巡視船12隻による「尖閣領海警備専従体制」を確立。石垣に10隻、那覇に2隻がそれぞれ配備された。
 大型巡視船「たらま」(1000トン型)も尖閣警備にあたる1隻だ。塚崎稔男船長は「領海警備の最前線で、後に引けない覚悟を持って任務にあたっている」と話す。
大型巡視船「たらま」の船橋内。奥に船長用の椅子が置かれている(沖縄県石垣市)
 全長96メートルの船舶の前方甲板には放水銃と20ミリ機関砲が装備され、ブリッジには無数の計器が並んでいた。緊急時は映像記録や本部への連絡、操舵(そうだ)などの任務を乗員がミスなくこなすため、全体に目配りするのが船長の重要な任務だという。
 中国公船の行動は複雑化が進む。最近は4隻が2隻1組の編隊に分かれ、巡視船をかく乱するような行動もとる。塚崎船長は「中国公船は大型化、武装化の傾向がみられる」とした上で、「事態をエスカレートさせないという大方針を肝に銘じている」と力を込めた。
 また、石垣市の中山義隆市長は、中国による香港国家安全維持法の施行に注目し「尖閣だけ別物だとは思っていない」と指摘。さらに中国が強硬姿勢を示すことに警戒感を示した。(酒井恒平)

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