大阪で重症病床使用率が上昇 10日で倍、確保課題に

新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、重症患者向け病床の確保が課題になっている。高齢者に感染が広がっていることが背景にあり、大阪府の重症者は17日時点で70人と東京都(27人)を大きく上回る。重症病床使用率は37.2%と10日前の約2倍になった。府は病床の確保を目指すが、「もう限界」と訴える医療機関もある。(大畑圭次郎)
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感染拡大の「第1波」で、重篤な患者に対応する集中治療室(ICU)の10床をコロナ患者用に確保した近畿大病院(大阪府大阪狭山市)。感染が落ち着き始めた5月下旬以降は一部を一般用に戻し、6床をコロナ患者用としてきたが、府からの要望で近く10床に引き上げる方針だ。
東田有智院長は「さらに増やすなら救急患者の受け入れを制限せざるを得ない」と話す。コロナ用病床には専属スタッフが必要だが、東田院長は「医師や看護師の数に余裕がない」と明かす。
病院経営への影響も深刻だ。同病院がコロナ用に病床を空けたり、一般患者が受診を控えたりした結果、4~5月の医療分野の収支は前年同期比で約4億円悪化したという。東田院長は「国からの補助は1床あたり日額最大30万円でとても足りない。今後、コロナ患者を受け入れられない病院も出てくるだろう」と懸念する。
府内の感染者は6月中旬から再び増え始め、8月7日に過去最多の255人を確認した。7月と8月の感染者数を年代別で比較すると、30代以下の割合が低下する一方、60代以上は9%から20%になった。若い世代の無症状や軽症の患者が、家庭内などで高齢者に感染させている構図が浮かぶ。
現在、府がコロナ用として確保している重症病床は188床。国の緊急事態宣言が発令されていた5月上旬以来、増えていない。しかも188床のうち一部は一般病床に転換しており、すぐにはコロナ患者に使えない。
17日時点で実際にコロナ患者が入院していたり、コロナ用に空けたりしているのは113床。この数字をもとに使用率を計算すれば62%になる。
府は感染状況によって段階的に重症者用病床を増やす方針。重症患者数が105人以上になれば215床に増やす計画だが、府担当者は「簡単ではない」と打ち明ける。
重症患者の治療にはICUなどの高機能設備が必要だ。現在府内にある救命救急用のICUは約400床。脳卒中や心筋梗塞などの治療にも一定数の病床は必要で「188床が限界に近い数字」(担当者)との見方がある。
重症患者の急増に対応するため、府は11月をめどに、重症患者専門の「大阪コロナ重症センター(仮称)」を設置する。プレハブ建てでまずは30床、その後60床まで増やす予定だ。ただ、新型インフルエンザ対策特別措置法では、臨時医療施設での診療は緊急事態宣言が発令された場合しか認められない。
府は同センターの稼働に備えて医師や看護師の確保を進めるが、担当者は「どの病院もスタッフ数に余裕がなく、確保は難しい」と漏らす。
りんくう総合医療センターの倭正也感染症センター長は「第1波のときと比べると、治療薬の確保が進み、医療現場の経験値も高まっている」と指摘。「検査態勢を強化し、手遅れになる前に感染に気付くことが重要。高齢者と同居する若者などに、さらに慎重な行動を呼びかけることも必要だ」と語る。
兵庫・京都「病床、まだ余裕」
兵庫県や京都府では重症病床の使用率は低水準にとどまっており、両府県は「まだ余裕がある」と説明している。
兵庫県の重症患者は16日時点で14人。県は110床を確保しており、ホームページで「医療体制は十分余裕があります」と説明している。県は最大120床まで引き上げる計画だ。今後、重症患者が増えた場合は積み増す方針だが、担当者は「医療スタッフの数にも限界があり、病院側への負担はかなり大きくなるだろう」と話す。
京都府の重症患者は16日時点で4人。府は感染者数が増え始めた8月上旬以降、重症患者用として86床の病床を確保している。使用率は連日3~4%台で、担当者は「まだ余裕がある」と話す。ただ、ここのところ高齢者に感染が広がりつつあり「今後の重症者の増え方に注意が必要」という。

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