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バフェット流バリュー投資の要 企業の価値を理解する

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(7)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。

●ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営(容姿は本人と変えています)。
●ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年(架空)。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
●ナナコ ゴローの妹(架空)。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

前回に投機と投資の違いについてろくすけさんに解説してもらったゴローとナナコ。株式投資を行う際には「価値を増やし続ける企業」を見分けることが大事だと教わりました。では、企業が生み出す価値とは何でしょうか。今回はこの点に話が進みます。

ゴロー ろくすけさんは価値という言葉をよく口にされますが、そもそも企業が生み出す価値とは何でしょう?

ろくすけ そうだね。株を発行している企業の活動は、商品やサービスをつくり出すための支出や販売収入といった、お金の流れで成り立っているだろう? だから、企業が生み出す価値は、企業におけるお金の流れを基に算出できるという考え方があるんだ。

ゴロー お金の流れですか……。

企業が生み出す3つの価値

ろくすけ この先の説明は難解かもしれない。だけど重要なことだから、平易な説明を心掛けるので辛抱強く聞いてほしい。実は企業がお金の流れから生み出す価値には、(1)事業価値(2)企業価値(3)株主価値─の3つがある。

1つ目の事業価値はその名の通り、企業が営む事業の価値を指す。企業が事業を通して今後各年度で上げる稼ぎを予測した上で、そこから算出する。だから事業価値は、企業の「今後の稼ぎ」の価値と言い換えることができる。

企業の稼ぎは、前回に説明したように複利で増加していく。その量は、企業の事業成長スピードと持続性によってかなり変わってくる。具体的な計算方法は別の機会に説明することにして、今回は重要なポイントだけ紹介しよう。

それは、事業価値が何によってつくり出されているかだ。大きく分けると、企業が事業用に保有している資産と事業を回す中で生じる負債の2つに分けられる。

ゴロー 負債ということは、つまり借金ですね。

ろくすけ いや、負債と言っても金融機関などからの借入金ではない。事業活動の中で支払いを先送りしているお金や、売り上げが立つ前にあらかじめ受け取っているお金だ。企業会計の費目では、買掛金や未払金、前受金が該当する。それに対して事業用の資産に該当する費目は、現預金や売掛金、棚卸資産、各種設備などだ。

一方で、企業の保有資産の中には、事業活動には結び付いていないものもある。例えば、遊休地や運用を目的とした有価証券などだ。これを「非事業用資産」と呼ぶ。

ここで、企業の資産や負債の状況を示す「貸借対照表」のイメージ図を見てみよう。事業用資産、非事業用資産、事業用負債の3つに該当する費目を色分けするとこうなる。

ナナコ 大学の授業で財務諸表の要点は習ったので、貸借対照表も大まかには理解しています。

ろくすけ それは説明の手間が省けるね。では次に進もう。2つ目の企業価値は、事業価値に非事業用資産の価値を加えたものになる。これが企業全体の価値だ。この企業価値から、最終的に金融機関に返済する有利子負債を除いたものが、3つ目の株主価値になる。すなわち、株主の持ち分の価値だ。ゴロー君、企業が発行している株の全体の価値に、価格を付けるとしたら何になる?

ゴロー えーと、時価総額ですか?

ろくすけ 正解だ。時価総額は通常、発行済み株式から市場で流通していない株式(種類株)を除いた株式の数(普通株式数)に、その時々の株価を掛けて算出する。この時価総額は、株主価値に対する市場での評価であり、株主の持ち分の値段ということだ。

株主価値よりも事業価値を重視する

ナナコ ということは、3つの価値の中で最も重視しなくてはならないのは、株主価値ですか?

ろくすけ 株主価値よりも、それを構成している事業価値の方に注目すべきだ。なぜなら、私たちが投資すべきなのは、事業価値が大きく、かつ、それが時間とともに増えていく企業の株だからだ。

高い価値を生み出す優良企業はお金の使い方も上手だ。価値が大して増えず、下手したら減るかもしれない非事業用資産を多く保有してはいない。

ゴロー 事業価値が最も重要ということは、「今後の稼ぎ」をしっかり算出できるかどうかが鍵になりますね。

ろくすけ その通りだ。今後の稼ぎを算出するには、まず事業価値が事業用資産と事業用負債をもとにつくり出されていることを理解する。そして、貸借対照表を含む財務諸表を読み込んで、お金の流れを分析することが欠かせない。3つの価値の内訳を貸借対照表に関連付けて説明したのは、この点を認識してほしかったからだ。

ゴロー 話を伺って、成長力の高い企業を見定めるのが大事だと改めて感じました。

ろくすけ 成長のエンジンの性能を高めて、より多くの事業価値を生み出す仕組みをつくるのは、経営者の役割だ。一方、その価値に対して売買を通して株価という価格を付けるのが、私たち投資家の役割。経営者は価値をつくり、投資家は価格を付けるというわけだ。

算出した1株当たりの株主価値に比べ、実際の株価が大きく下回っている状態を利用して大きな値上がり益を得ようとする。こうした投資法を「バリュー投資」という。米国の著名投資家、ウォーレン・バフェットもこのバリュー投資を実践している。彼は「価格はあなたが支払うもので、価値はあなたが得るものだ」と言っている。

イラスト/木山綾子
投資の神様 ウォーレン・バフェット
米投資会社バークシャー・ハザウェイの会長兼CEO。1965年から現在まで年平均20%近いリターンを出し続けている。

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ろくすけ バリュー投資は割安株投資と和訳されているが、単にその企業の資産価値と比べて割安な株を売買するという意味ではない。先に指摘したように、成長企業の稼ぎは複利で増えていく。つまり、企業の事業価値は一定ではなく、上昇し続けるわけだ。株価の上昇がそれに追い付かず、1株当たりの株主価値と株価の差が埋まらない限りは、株を持ち続けられる。そこで果実を得るのがバリュー投資というものだ。

価格ではなく価値を追う

ナナコ 株価が企業の事業価値に見合った価格にならず、大きく下回る状態になるのはなぜですか?

ろくすけ まず、その企業の事業価値が適正に算定されていないからだ。事業についての情報が不足してリスクを過大に見積もったり、成長のスピードや持続する期間が見通しづらかったりすると、評価が過小になる。

逆に、投資家の多くが事業価値を見誤って過大評価し、株価が1株当たりの株主価値を大きく上回ることもある。また、企業の成長がかつてに比べて衰えると、多くの投資家が関心を持たない。売買が増えずに価格が低迷する。

ナナコ そうした状態で企業の事業価値を適正に算定できれば、株式投資で優位に立てますね。

ろくすけさんが愛読する『バフェットに学ぶ価値創造経営』(日本経済新聞出版社)

ろくすけそうだ。株価の動きではなく、企業の事業価値を追い掛ける、すなわち、「価値に投資する」ことを意識して、きちんと事業価値に見合った価格を付けられるようになることを目指そう。そのためにも、財務諸表に関して私が話すことはしっかりと理解してほしい。

財務諸表は、経営者が経営資源の配分について意思決定をする上でも欠かせないものだ。その指示を受けて働く人や経営者を相手に営業する人にとって、財務諸表を理解することは経営者の意図をくむ助けになる。仕事で先回りができるようにもなるよ。

ゴロー そうかぁ。仕事にも役立つならちゃんと勉強しようかな。本屋さんでも決算書に関する本がたくさん並んでいるし、前から気にはなっていたんですよ。

ろくすけ いい姿勢だ。ちなみに「価値に投資する」という表現に私は別の意味合いも込めている。経営者が抱く価値観にも共鳴して投資するということだ。価値を生み出すのは、経営者の価値観、すなわち社会にどういった形で貢献していくかという心構えによるところも大きいからね。この話も別の機会にしよう。

(次回に続く)

今回のまとめ
投資すべきは、事業価値が大きく、かつ増える企業の株

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