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巨人、首位快走の裏に「傾斜キャッチボール」あり
編集委員 篠山正幸

2020/8/18 3:00
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4年目で初勝利を挙げた大江竜聖ら、巨人の中継ぎ陣が首位快走に貢献している。宮本和知投手チーフコーチによると、今季取り入れたキャッチボールのやり方が奏功しているかもしれない、とのこと。一体どんな工夫をしたのだろうか。

巨人の首位快走に中継ぎ陣が貢献している。7月31日の広島戦後、ヒーローインタビューを受ける(左から)鍵谷、高梨、大江、大竹、中川=共同

巨人の首位快走に中継ぎ陣が貢献している。7月31日の広島戦後、ヒーローインタビューを受ける(左から)鍵谷、高梨、大江、大竹、中川=共同

そのキャッチボールについて、宮本コーチが解説してくれたのは先発・畠世周の危険球退場を、救援陣5人でカバーして勝った7月31日の広島戦のあとだった。急きょ登板した鍵谷陽平や、大江らが無失点リレー。1点差を守り切った。

今季の巨人は菅野智之以外、長いイニングをあまり期待できない先発陣とあって、救援陣の重要性は増している。ここまで大きな破綻は少なく、競り負けない野球を可能にしている。

その投手陣が取り組んでいるのが、ブルペンを使ってのキャッチボール。

試合前の投手陣の調整は通常、野手陣が打撃練習を行っている間に中堅奥のスペースで行う。ランニングをしたり、ストレッチをしたり。キャッチボールもまた、ここで行う。もちろん投球練習はブルペンで行うが、この"平地"で、かなり強めの球を投げることも少なくない。

誰も疑うことなく続いてきた、ほぼ12球団共通のルーティンだ。宮本コーチはそこに改善の余地を見つけたらしい。

キャッチボールから「マウンド」意識

制球に不安のある若手の指導法を思案していたところ、どうせならキャッチボールの段階から試合に近い環境にしてはどうか。つまり、ブルペンの傾斜を使ってはどうか、というアイデアが浮かんだという。

7月から始めたばかりというから、まだ日は浅い。じっくり効果を確かめる必要はあるが「練習から傾斜で」という発想自体、貴重だと思われる。

プロ4年目で初勝利をマークした巨人の大江。17日現在、防御率0.69と安定している=共同

プロ4年目で初勝利をマークした巨人の大江。17日現在、防御率0.69と安定している=共同

一般の人からすれば、投手が傾斜を使って練習するのは当たり前じゃないか、となるだろう。

だが、キャッチボールは平地で行うということを、長年慣行としてきた業界内では、なかなか出てこない発想だ。ユニホームを脱いでから、タレント業もこなし、外の空気を吸った人ならではの柔軟な思考かもしれない。

このあたり「プロではエースで4番などありえない」という常識を覆し、大谷翔平(現エンゼルス)の投打二刀流を貫徹させた日本ハム・栗山英樹監督のすべてゼロベースから見つめ直す発想に通じるものがある。

そうした"素人目線"が、しばしば革新をもたらすのは野球に限ったことではない。

宮本コーチは投手陣に「傾斜にお金が落ちているんだぞ」と語りかけているそうだ。これは「グラウンドにはゼニが落ちている」という、南海(現ソフトバンク)の名将、鶴岡一人監督の言葉をもじったもの。確かに傾斜地であるマウンドを職場とする以上、投手はそこを我が物としなくては生き延びられない。

創意工夫の裏に投球数の激減?

平地でのキャッチボールは踏み出す足が、傾斜を使ったときよりも早く地面につく。傾斜のあるマウンドでは着地が遅くなるために、体重移動のタイミングが変わってくる。平地でぽんと足をつくよりも、粘って踏み出す必要がある。その感覚を体に覚えさせるというのが、宮本コーチの狙いらしい。山岳地帯を住処(すみか)とするヤギたちが、おそらく傾斜を傾斜とも意識していないのと同じように、投手も傾斜をすみかにしてしまえばいい、という考え方なのだ。

もちろん平地でのキャッチボールにはそれこそプレーンな状態でバランスを確認する、といった意味もあるだろう。

今年2月のキャンプで、ロッテの吉井理人投手コーチは新人の佐々木朗希らのメニューとして「逆傾斜」のスローイングを取り入れた。

マウンドから投げ下ろすのとは逆に、上向きに踏み出しながら、腕をしっかり振り下ろす、という練習だった。もとはメジャーで故障や手術明けの投手用に編み出されたプログラムだという。

ロッテの新人・佐々木朗は、2月のキャンプで上向きに傾斜のついた状態でのスローイングを取り入れていた=共同

ロッテの新人・佐々木朗は、2月のキャンプで上向きに傾斜のついた状態でのスローイングを取り入れていた=共同

平地、傾斜、そして逆傾斜と、目的次第でいろいろな角度の練習があっていいのだろう。

それにしても、なぜ今、傾斜に慣れようという練習法が出てきたのか、と考えたときに、絶対的な投球数の激減という昨今の流れに行き着く。

200球、300球という投げ込みはキャンプでもほとんど見られなくなった。思えばあれは傾斜の感覚を体にしみ込ませる訓練でもあったわけだ。

能力がありながら、伸び悩む投手のなかには案外、傾斜になじんでいないケースがあるのかも……。時代の変化に対応し、少しでも傾斜で過ごす時間を長く、という練習法がどんな成果を生み、どこまで定着するか、注目したい。

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