戦争の記憶どう引き継ぐ 進む世代交代、若者へ発信も

戦後75年
社会・くらし
2020/8/15 18:04
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全国戦没者追悼式に参列した人たち(15日、東京都千代田区の日本武道館)

全国戦没者追悼式に参列した人たち(15日、東京都千代田区の日本武道館)

終戦の日の15日、各地で追悼式が営まれた。今年で戦後75年。世代交代が進み、戦時の記憶は消えつつある。「平和への思いを引き継いでいかなければ」。追悼の現場では誓いの声が聞かれるとともに、戦争の教訓と向き合いながら、若い世代に向けて発信する取り組みも始まっている。

「毎年少しずつ空席が目立つようになってきた」。日本武道館(東京・千代田)で開かれた全国戦没者追悼式。遺族会の手伝いで終戦の日は20年以上武道館に足を運んできた東京都北区の会社員、松原義孝さん(55)は会場の光景から追悼式の先細りを感じとってきた。

松原さんの念頭にあるのは、慰霊の場で進む遺族の高齢化だ。今年の追悼式は新型コロナウイルスの影響で参列は例年の1割以下。「来年以降はまたたくさんの人が出られるようになれば」と願いつつ、「遺族は減る一方だが追悼をやめてはいけない。私たちの世代が20~30代の若者にバトンをつなぎたい」と話す。

香川県善通寺市から参列した金清道保さん(91)も若い世代への継承が気がかりだという。「息子の世代もお参りはするけれども、戦争の中身はなかなか伝わっていない気がする」。父は旧ソ連に抑留中の1947年に亡くなった。自身は16歳で海軍の駆逐艦に乗っていた頃に終戦を迎えた。

千鳥ケ淵戦没者墓苑で手を合わせる人たち(15日午前、東京都千代田区)

千鳥ケ淵戦没者墓苑で手を合わせる人たち(15日午前、東京都千代田区)

敵機から攻撃を受けた時の恐怖や痩せこけた軍人の姿は今も脳裏に焼き付いている。全国戦没者追悼式への出席はおそらく今年が最後。「戦争の記憶を若い世代に継承していきたいが、遺族会の青年部もなかなか人が集まらない」と焦る。

日本遺族会(東京)によると、47都道府県の総会員数は、記録がある中で最多だった1967年の約125万4200世帯から、2019年には半数以下の約57万世帯まで減少した。各地の遺族会は戦争の悲惨さを語り継ぐために青年部の結成やSNS(交流サイト)を活用した情報発信などに力を入れている。だが会員の高齢化を理由に3月末で解散した地方の遺族会があるなど、後継者不足は年々深刻さを増す。

一方で、若い世代に分かりやすく伝えようという動きも出ている。

東京大空襲・戦災資料センター(東京・江東)は6月にリニューアルして開館した。分かりやすい展示が目玉で、視覚的に訴えるマネキンやレプリカなどに力を入れた。QRコードをスマートフォンで読み込めば、証言の動画を視聴できる。

2004年から約2800人に上る戦争体験者への聞き取り活動を続ける戦場体験放映保存の会(東京)は8月8~10日、テレビ会議システム「Zoom」を活用し、戦争体験者との「ウェブ茶話会」を開いた。

フィリピン・ルソン島での戦闘体験、旧満州(現中国東北部)からの逃避行、戦闘機の元パイロット……。84~97歳の戦争経験者がウェブカメラ越しに全国から参加した視聴者に自身の過酷な体験を語り、各回ごとに幅広い世代から約70人が参加した。保存の会の担当者は「高齢者でも遠方から参加できる。コロナ収束後も続けられれば」と手応えを話す。ウェブ茶話会は9月にも実施する計画という。

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