韓国・文大統領、日本批判は封印 外交孤立を懸念

日韓対立
2020/8/15 17:15
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光復節の式典で太極旗を振る文在寅大統領(15日、ソウル)=ロイター

光復節の式典で太極旗を振る文在寅大統領(15日、ソウル)=ロイター

【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は15日の演説で、対立を深める日本との対話に意欲を示した。北朝鮮との対話が途切れ、同盟国の米国と在韓米軍の駐留経費交渉が宙に浮くなど外交面で閉塞感が強まるなか、厳しい対日批判を封印した。ただ日本企業の資産現金化が迫る元徴用工問題の解決策が描けているわけではない。

文大統領は元徴用工問題を巡り「日本政府と向き合う準備ができている」と対話での解決に期待を示した。日本製鉄に賠償を命じた韓国最高裁判決に関し「韓国で最高の法的権威と執行力を有している」と指摘し、判決尊重という従来の立場は譲らなかった。

韓国の8月15日は、日本の植民地支配からの解放を祝う光復節だ。文氏は演説で「日本克服の歴史」に力点を置いた。

1936年ベルリン五輪の男子マラソンで金メダルを取った孫基禎選手が、表彰で胸の日の丸を隠そうとしたエピソードを引き「二度と誰にも負けない堂々とした国をつくる」と訴えた。その文脈で、日本が強化した輸出管理を巡り「輸出規制という危機も国民と共に克服した」と従来の強硬姿勢は封印した。

1年前の2019年8月は日本製品の不買運動が広がり、文政権は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)まで破棄しようとした。しかし、今年は「反日カード」がプラスに作用しないとの判断が働いている。

昨年と比べ変化したのは、閉塞感の強い外交情勢だ。文大統領が最優先にしてきた北朝鮮との関係が悪化し、米国とは在韓米軍の駐留経費交渉が解決していない。米中対立のあおりで、関係改善をめざしてきた中国との距離感も問われることになる。

外交関係者によると、中国政府は外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員が近く訪韓する用意があると伝えている。習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪韓日程などが議題とみられるが、メディアは「韓国を中国側に引き込むため」(朝鮮日報)と警戒している。

新型コロナウイルスの影響で展望が開けない経済面でも、日本を含む周辺国との貿易回復が喫緊の課題だ。国際通貨基金(IMF)は2020年の韓国の経済成長率をマイナス2.1%と予測、落ち込み幅は1998年のアジア通貨危機以来とされる。

14日時点の文大統領の支持率は就任以来最低の39%(韓国ギャラップ)だった。不動産価格の高騰を抑える政策の失敗で国民の不満に火がついたためで、不支持率は53%と1週間で7ポイントも跳ね上がった。このような状況で、外交や経済でも失点が重なれば政権の致命傷となりかねない。

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