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女子バレー長岡「成長を大事に」 大ケガから代表復帰

日本代表の紅白戦でサーブを打つ長岡。2度の左膝の大ケガから復帰し、2年ぶりに日の丸のユニホームを着た=日本バレーボール協会提供

今月9日まで行われたバレーボール女子日本代表の合宿に、2016年リオデジャネイロ五輪代表で攻撃専門のオポジットの長岡望悠(29、久光)が2年ぶりに参加した。同五輪でチーム最多得点を挙げたサウスポーはその後、選手生命を脅かす左膝の大ケガを2度も経験。「やっと5割」という回復具合ながら紅白戦出場も果たし、「一つの成長を大事に毎日を過ごしたい」と焦らず自分と向き合っている。

画面越しに見つめたファンは、その姿に安堵したに違いない。2日にオンライン配信された代表チームの紅白戦。途中からコートに入った長岡は持ち場であるライトからスパイクを決め、強烈なジャンプサーブも放った。

ごく限られた出場だったとはいえ、人前で試合をしたのは18年12月以来のこと。「今の自分ができるベストを出し切る姿を見せられた。どんな体の使い方ができるか、一つの基準ができたような感覚ですごく良かった」とかみしめるように復帰戦を振り返った。

VリーグでMVPを2度獲得し、5位だったリオ五輪で得点源として活躍。2大会ぶりのメダルを目指す東京五輪でも攻撃の中心と期待されていた。身長179センチ、308センチの最高到達点から繰り出す強打は威力十分。左利きゆえ、ライトからのスパイクは右利きよりボール1個分速くトスを打てる。スピードを重視する中田久美監督のバレーに、不可欠なピースだった。

長岡は5位だったリオデジャネイロ五輪では左のエースとしてチーム最多得点を挙げた=日本バレーボール協会提供

本来なら全盛期を迎える20代後半。選手生命に関わるほどの大ケガは、どちらも試合中に負った。1度目は17年3月のVリーグ。スパイクで着地して膝をひねると、そのまま立ち上がれない。左膝前十字靱帯の断裂。衝撃は大きかったが、当時は「東京」まで時間があると思うことができた。

「アスリートとして新たに生まれ変わりたい」。懸命なリハビリを経て18年夏のジャカルタ・アジア大会と秋の世界選手権出場を果たすと、「バレーボールをもっと極めたい」とイタリアリーグへ挑戦。東京五輪に向けて並々ならぬ決意で臨んでいた同年12月、2度目のケガに見舞われた。

ブロックに飛んで着地した際、左足をひねったと感じた。「膝に何か起こったのは分かったけれど、どこまでか判断がつかなかった」という感覚で緊急帰国。前回と同じ左膝前十字靱帯の損傷、全治8カ月と診断された。またコートに戻れるのか。長いトンネルの先になかなか光が見えなかった。

「手術では1回目と違う所から靱帯を取ったので、リハビリは全く別物。本当にゼロからで思ったように体と膝が動かなかった」。当初予定の8カ月が過ぎ、復帰した久光で目標にしていた19~20年シーズンの試合出場もかなわない。

だから今年3月に五輪1年延期が決まったときも特別な感情はなかったという。「どこまでバレーができる膝になるか分からない状況だった。どちらかというと応援者の立場で捉えていた」

そんな過酷な状態を理解しつつ、代表合宿に呼んだのが現役時代に同じ膝のケガを克服した中田監督だった。女子代表では6月、12年ロンドン五輪銅メダリストで攻守の要だった新鍋理沙が現役引退を表明したばかり。指揮官は「新鍋が引退したから招集したわけではない」と前置きしつつ、「実戦的な練習を積み重ね、脳の神経をどう膝に伝えるか。かなり調子が上がれば戦力になる」と強調。前向きに復帰を待つ姿勢だ。

紅白戦はオンライン配信され、長岡(中央)は「たくさんの方に喜んでいただけてすごくうれしかった」と話す=日本バレーボール協会提供

ファンや首脳陣の高い期待。それは本人もひしひしと感じているに違いないが、前のめりな様子は一切ない。現状は「5割にやっと来たという段階」であり、左足で急に切り返すときの恐怖感は消えない。完全に回復できたとしても「前と全く違う百パーセントになる」。来年夏の東京五輪がモチベーションといえる状態ではないという。

それでも合宿参加を決めたのは「もう少しバレーボールをやりたい」という、小さな炎がまだ消えていないと気付いたからだ。

リハビリが難航していた今年の初め、五輪や復帰時期といった先の目標をあえてリセットしたところ「素直な、自分でも分からなくなっていた気持ちが初めて分かった」という。トレーナー陣の懸命な支えや仲間の声かけも、リハビリや練習場へと向かう背中を強く押してくれている。

次の舞台は10月中旬開幕のVリーグで、代表活動は来年春に再開。今は一つ一つ納得いくプレーを積み上げながら、自然と五輪を目指す気持ちが生まれてくればよいと考えている。

(鱸正人)

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