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匠弘堂、宮大工適性 2年で見極め

はたらく

社寺建築専門の工務店、匠弘堂(京都市)は新規採用者を2年間の見習い期間の後に正社員として登用している。その間に宮大工として長く働き続けられるかを会社、若者の双方が判断する。宮大工に憧れて入社するものの、細かな手作業や集団の規律についていけず離職する若者は多い。現代版の徒弟制度とも言える人材育成の仕組みで、伝統技術の継承をはかる。

新規採用者は半年契約を計4回繰り返す。2年間は半年ごとに宮大工を続けるかどうかを問われることになる。結果、転職する割合が大半を占める。同社がこの仕組みを設けたのは10年前。厳しい仕事のイメージが強い宮大工の世界への若者の門戸を狭めることなく、会社にもメリットのある方法として導入した。

横川総一郎社長は「『したい』と『できる』はちがう。宮大工に挑戦しようという意志はあっても、手先が不器用ではついていけない」と話す。一から技術を習得していく過程で宮大工としての適性が備わっているかどうか。10年でやっと一人前とも言われる宮大工の世界で、会社側にも見極める時間は必要で「正直2年でも短い」と言う。

見習い期間中の離職率は6、7割。ただ、横川社長は早期の転職は決してマイナスではないと捉える。横川社長自身、家電メーカーや設計事務所などを転々とした後に2001年に同社を創業した。「天職に巡り合うための転職。できないことに無理に時間を消費するより、向いている職業への手助けをしたい」ときっぱり。契約を続けるかどうかの判断は社員に任せるが、転職の相談には社長自らが応じるという。

創業時は社員のほとんどが60歳代だったが、現在見習い中の2人も含めた12人の社員の平均年齢は30歳代前半。若い世代を積極的に採用し、新陳代謝を繰り返すことで業界でも異例の若手集団となった。

同社は近年、京都・栂尾の世界遺産「高山寺」の金堂や開山堂の修理など着実に実績を積み重ねている。同業者が集まる勉強会を開いたり原木の製材作業から経験させたり、若手の知識・技術向上を積極的に後押しする。機械に頼らない手作業にこそ、宮大工の醍醐味を感じてほしいという。

担い手の意欲と素質を厳しく見極め、地道に育てる取り組みを通じて、質の高い仕事を引き継いでいく。

(村上由樹)

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