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ALS嘱託殺人 生きる権利の保障問う、2医師起訴

難病の女性患者から依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして医師2人が13日、京都地検に嘱託殺人罪で起訴された。医師と患者とのツイッターでのやりとりなどから、地検は同罪での立証が可能と判断したとみられる。事件は終末期医療のあり方や障害者らの「生きる権利」の保障を巡る議論も呼んだ。

起訴されたのは、大久保愉一被告(42)=仙台市=と山本直樹被告(43)=東京都港区。地検は2人の認否を明らかにしていない。

起訴状によると、2人は共謀し、昨年11月30日午後5時20分ごろから同35分ごろ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で京都市中京区の林優里さん(当時51)の自宅マンションで、林さんの嘱託を受け、胃ろうから薬物を注入し、同日午後8時10分ごろ、搬送先の病院で急性薬物中毒により死亡させたとしている。

捜査関係者によると、2人が知人を装って林さん宅を訪れた後、ヘルパーが意識不明となっている林さんを発見した。遺体から鎮静作用のある「バルビツール酸系」の薬物が検出された。

大久保被告は、事件の約11カ月前から林さんとツイッターで連絡を取り続けていた。その際、山本被告の名前を使用しており、林さんは山本被告の名前を挙げ「紹介状を書いてほしい」と主治医に訴えたり、事件前に山本被告名義の口座に現金130万円を振り込んだりしていた。大久保被告は、2人で訪れることを知らせておらず、自らの存在を隠そうとしていたとみられる。

大久保被告の妻で元衆院議員の三代氏(44)は13日、宮城県名取市で記者会見し、同被告が弁護士に「事件について反省している」と伝えていたと明らかにした。三代氏自身は面会できず、具体的な反省の文言は「何も聞いていない」とした。

同被告は8月上旬に精神状態が落ち込み、一時意思表示がままならなくなったが、現在は回復しつつあるという。

事件を受けて障害者や、支援者の団体は相次ぎ声明などを出し、生きる権利の保障にこそ目を向けるべきだと訴えた。

日本障害者協議会の藤井克徳代表は7月29日付の談話で「生きたいという思いに立ちふさがる社会、あるいは生きる権利そのものを否定する大きな障壁こそが問われなくてはならない」と強調し、事件は「許されない違法行為」で安楽死・尊厳死の議論と一線を画すと主張した。

全国障害者在宅生活支援事業者連絡会は、介助を担う立場から8月1日に「医療とは真逆の行為に深く抗議する」と反発し、「つらさや痛みを表現し、それを見守り続ける価値の重要性」を指摘した。

脳性まひの当事者団体「全国青い芝の会」は6日、「歴然とはびこり続けている優生思想を根底にした問題である」との声明を出した。〔共同〕

「安楽死の要件逸脱」専門家が批判


 ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の嘱託殺人事件で、医師2人は主治医ではない立場で薬物を投与し、患者を死亡させたとされる。専門家は「安楽死の要件から逸脱している」と批判する。
 1991年に起きた「東海大安楽死事件」で95年の横浜地裁判決は、医師の安楽死が許容される要件を(1)耐え難い肉体的苦痛がある(2)死期が迫っている(3)苦痛緩和の方法を尽くし、他に手段がない(4)本人の明確な意思表示がある――と示した。
 起訴された医師2人は主治医でなく、4項目のうち(1)~(3)の病状を正確に把握していた可能性は低い。医師と弁護士の資格を持つ大磯義一郎・浜松医科大教授(医療法学)は「要件からも逸脱し、論ずるに値しない」と指摘。安楽死の前提のインフォームドコンセント(説明と同意)が十分だったかにも疑問を呈す。
 大磯教授は「医療行為は、生活環境の中で患者本人だけでなく家族や医療・介護スタッフを含めた話し合いで決定すべきもの。この事件で、安楽死の議論が後退するのでは」と懸念する。
 患者の自己決定について研究する龍谷大の古川原明子准教授(刑法)は「他に選択肢がないと思い込み、死を決定せざるを得なかったのかもしれない」と推し量る。「なぜ死に追い込まれたのか。ALS患者らが生きやすいと思える社会にするには、何が必要なのか。医療や福祉などの問題から考える必要がある」と訴えた。〔共同〕

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