中国新幹線、2035年に総延長2倍 投資額70兆円か

アジアBiz
2020/8/13 19:30 (2020/8/14 5:14更新)
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遼寧省大連市の駅に停車する中国版新幹線(6月)

遼寧省大連市の駅に停車する中国版新幹線(6月)

【大連=渡辺伸】国有企業の中国国家鉄路集団は13日、同社が独占運営する中国版新幹線「高速鉄道」の総延長距離を2035年に約7万キロメートルへ延ばすと発表した。19年末の2倍だ。総投資額は少なくとも4兆5500億元(約70兆円)に達する見通し。経済対策を優先すれば、中国政府の財政を圧迫しかねない。

35年までに人口50万人以上の都市のすべてに高速鉄道を通す計画だ。総延長は現在の日本の新幹線の約21倍に達する。鉄路集団は声明で「(鉄道分野で)すでに世界トップクラス。資本をさらに拡充する」と説明した。

中国版新幹線の総延長は19年末時点で約3万5000キロメートル。すでに世界の同レベルの高速鉄道のなかで最長だとみられている。鉄路集団は従来、中国版新幹線の総延長を30年に4万5000キロメートルへ延ばす方針だった。

今回の延伸は中国政府による経済対策の色彩が濃いとみられる。鉄路集団の収益力が弱く、中国版新幹線の延伸による大型投資を回収するめどが立たないからだ。中国経済は新型コロナウイルスの影響で、4~6月期の実質成長率が前年同期比3.2%にとどまった。

鉄路集団の19年12月期は売上高が1兆1348億元、最終損益が25億元の黒字。売上高純利益率は0.2%にすぎない。中国版新幹線は現状でも東北部、西部など地方都市での採算が厳しい。1~3月期は新型コロナ抑制のための外出制限で打撃を受け、613億元の最終赤字に落ち込んだ。

交通が専門の北京交通大の趙堅教授は、中国版新幹線を1キロメートル延伸するのに1億3000万元かかると指摘する。3万5000キロメートル延ばすには単純計算で4兆5500億元の投資が必要だ。鉄路集団の総資産は19年末で8兆3150億元だが、そのうち負債が5兆4859億元を占める。同年の中国の国内総生産(GDP)の5.5%にあたる大きな額だ。負債膨張は避けられそうにない。

鉄路集団は延伸工事の費用を調達するため社債を発行し、中央政府や地方政府も多額を引き受けるとみられる。将来、返済が滞る場合は、政府の財政を損ないかねない。

習近平(シー・ジンピン)指導部にとって国有企業改革は大きな課題だ。実質は破綻しているのに政府や銀行の支援で存続する「ゾンビ企業」の処理に言及してきた。だが、中国政府は20年、鉄路集団に対し1000億元の資本注入を決めた。

中国版新幹線をはじめとする鉄道は、地方政府が競って誘致する。これも路線が延びる一因になっている。鉄道建設で雇用を創出し、関連産業も育てて景気を下支えする狙いだ。北京交通大の趙氏は「(地方政府の幹部は)任期中に(高い)経済成長を達成するため鉄道建設を利用する。(鉄路集団の)債務返済は気にとめない」と話す。

鉄路集団は中央政府の鉄道省(現・交通運輸省)の下部組織が独立した国有企業だ。高度成長と並行して全国に路線を張り巡らせ、ここ数年は年10~20%のペースで総延長を延ばしてきた。

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