中国・アフリカ団結サミット
十字路
米中対立の焦点は貿易、技術から投資、安全保障へと急速に広がり勢力圏争いも熱を帯びている。国連加盟国が多く国際世論の形成力が大きいアフリカでも両国は様々な駆け引きを見せる。
6月中旬、中国は「中国・アフリカ団結抗疫(団結して感染症と闘う)特別サミット」と題した会議をオンライン開催した。関係筋によるとアフリカからは南アフリカ、エジプト、ケニアなど主要13カ国の首脳が出席。グテレス国連事務総長もゲスト参加した。この会合で習近平(シー・ジンピン)国家主席は、ワクチン実用化後の優先供与と、20年中に支払期限を迎える無利子借款債務の免除や債務返済期限の延長を約束した。
そして共同声明に「台湾および香港に関する中国の立場を支持する」との文言を盛り込んだ。中国は政治的支持のためアフリカ諸国に巨額の開発融資をしてきたが、債務不履行の懸念が高まっている。
一方、米国はサハラより南のアフリカでは第1号の2国間自由貿易協定(FTA)交渉を、7月にケニアと始めた。2国間FTAモデル確立に向けたアフリカ重視の通商政策にみえるが、各国から支持を得られるだろうか。米国は00年にアフリカ成長機会法(AGOA)を成立させ関税ゼロで市場を開放、縫製業などの労働集約型の輸出産業をアフリカで育成し評価を得た。
アフリカ諸国としては全54カ国が署名したAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)の運用を控え、米国とは多国間の通商協定締結を望んでいる。米国にはその覚悟と準備があるのだろうか。ウィズコロナの時代に入りアフリカは、感染症対策と、インフラを整備して外資を受け入れる経済発展モデルを推進できるのか、難しい状況を迎えている。アフリカでの勢力圏争いは、米中にチャンスと同時に大きなリスクも与えている。
(三井物産戦略研究所 特別顧問 中湊晃)