流動性、安全性、収益性… お金の置き場所を3分割
Dr.マネーお悩み外来 Vol.8

本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所zoom相談」にやってきました。「自分のお金は自分で管理運用できるように、一生困らないマネーリテラシーを身につける」をモットーに、FP(ファイナンシャルプランナー)の白鳥京香がみなさまのご相談にお応えします。
前回の処方箋は、
・お金を使うときは支出の質に意識的になる
・習慣化できる環境をつくることが大切
でした。(1)生活に必要な支出(2)自己投資のための支出(3)心を豊かにする支出――3つの仕分けはうまくいったのでしょうか。
Bさん こんにちは。この2週間、買い物をするたびに頭の中で3つの仕分けをして、必ずレシートをもらい、毎晩C(貯蓄)タイムを実行しました。実は今、仕事が忙しくてデリバリーやテークアウトが増えて、(1)の生活費が多くなっています。遊ぶ時間がないので(3)の心を豊かにする支出は必然的に減っています。
白鳥 結果的にバランスが取れているということですね。ちなみに、3つの仕分けは家計全体でも個人でも同じように考えます。例えば、夫婦共に小遣い制の場合、小遣いは(1)の生活費ですが、個人の小遣いもまた3つに仕分けて使います。
さて、今回は「お金の置き場所」についてお話ししたいと思います。お金の特性によって3つに分けるのが基本形です。3つの特性とは「流動性」「安全性」「収益性」です。
まず、「流動性」はいつでも自由に出し入れできること。急な入院、失業、減給など想定外の出費に対応するためです。いわば「生活を守る資金」です。会社員は万が一、病気やけがで仕事ができなくなっても、賃金の3分の2の傷病手当金が受け取れます。生活を守る資金は生活費の3カ月分ほどを目安にします。
一方、国民健康保険には原則、傷病手当金はないので、個人事業主等の人は6カ月~1年分くらいあった方が安心です。このお金は、「普通預金」に置いておきましょう。コロナ禍による収入減で、生活を守るためのお金の大切さを改めて感じた人は多いでしょう。また、この資金があれば民間の医療保険に入らなくても、基本的には公的医療保険制度だけで心配ないです。
「安全性」は元本が減らないことです。数年後に必要な住宅購入の頭金や子供の進学費用などは元本を減らしたくないので、定期預金、個人向け国債などに置いておきます。普通預金より若干金利が高く、普通預金より引き出すにはやや不便という置き場所です。
「収益性」は、当面使う予定のないお金を増やすための置き場所です。iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたて型の少額投資非課税制度(NISA)などを優先的に使います。
Bさん 私は月々2万円ずつ、2回のボーナス時にプラス15.5万円ずつ貯蓄をすることにしました。置き場所はどう分ければいいですか? 貯蓄額は先日のボーナスに貯金した分も入れると60万円です。当面必要になるお金はありません。それから、企業型DC(確定拠出年金)に加入しているので、iDeCoが使えません(※2022年10月からは企業型DC導入企業もでiDeCo併用が容易になる)。
白鳥 では、Bさんのお金の置き場所は2つにしましょう。一つは「流動性」重視の普通預金です。
Bさん 毎月の生活費は25万4000円なので、3カ月ぶんだと約76万円ですね。
白鳥 そうですね。次の冬のボーナス時の貯蓄で「生活を守る資金」はためられますね。ふたつ目はためて増やすお金の置き場所をつくりましょう。月々の2万円はつみたてNISAで運用していけばいいと思います。
Bさん 「生活を守る資金」が3カ月分たまったあとはどうするんですか?
白鳥 つみたてNISAは年間40万円まで積み立て投資することができますので、ボーナスの残った分を証券口座に入れておきましょう。ちなみに、証券口座に預けたお金はMRF(マネーリザーブファンド)という投資信託で運用され、銀行の普通預金より若干高い金利がつきます。私はネット証券を使っていますが、ネット銀行やメガバンクとも連携していて、入出金がとても簡単です。口座管理手数料もかかりません。ここから個人向け国債を買うこともできますし、「近い将来必要になるお金を置いておく場所」としても利用するといいでしょう。つみたてNISAで何を買うかは、前回の新入社員Aさんの記事を参考にしてください。5回のzoom相談、おつかれさまでした。今日の処方箋です。
◇ ◇ ◇
・お金の置き場所をつくり、効率よくお金をためて増やす
・お金を増やすならiDeCoやつみたてNISAを優先的に使う。
今回でBさんのご相談は終わりです。では、2週間後にお会いしましょう。

本日もお金の悩みを抱えた若者が「白鳥FP事務所」のドアをたたく……。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏がマネーリテラシーの向上のために様々なお金の問題を取り上げ、対話形式でわかりやすく解説します。隔週火曜日に掲載します。