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「黒い雨」控訴、政府、訴訟とは別に援護区域拡大検討

(更新)
「黒い雨」訴訟で国が控訴したことについて取材に応じる加藤厚労相(中央)(12日午前、厚労省)=共同

原爆投下直後に降った放射性物質を含んだ「黒い雨」を国の援護対象区域外で浴びた原告84人全員を被爆者と認めた広島地裁判決について、被告の広島県、広島市、政府が12日、控訴した。政府は訴訟を続ける一方で、援護対象区域の拡大も視野に再度の検証を行う方針も明らかにした。

援護対象区域は原爆投下直後の調査から爆心地北西側に1976年に設けられた。区域外の住民側は区域の拡大を求めてきたが、政府は科学的根拠がないとして応じてこなかった。

今回、訴訟とは別に政府が再度の検証の方針を示したことで、40年以上前に指定された援護対象区域が広がる可能性が出てきた。原告らの高齢化が進むなか、納得できる着地点が見いだせるのか、検証と控訴審の行方に注目が集まる。

安倍晋三首相は控訴理由について「累次の最高裁判決とも異なるため上訴審の判断を仰ぐことにした」と首相官邸で記者団に語った。

最高裁判決を巡っては、長崎原爆で政府の指定する地域外にいた人らが被爆者と認定するよう長崎県、長崎市、政府に求めた訴訟で最高裁が原告の訴えを認めなかった経緯がある。

一方で安倍首相は「被爆という筆舌に尽くしがたい経験をした人への支援策にしっかり取り組む」と強調。援護対象区域の拡大を求める広島県と広島市の意向を踏まえ「黒い雨地域の拡大も視野に検証する」と表明した。加藤勝信厚生労働相は「スピード感を持って検証を進めたい」と説明。厚労省は検証に向け専門家を含めた組織を立ち上げる方針を示した。

広島県と広島市は被爆者健康手帳交付の事務を担うため被告の立場だが、実質的な被告の政府に控訴断念を申し入れた。3者による協議の中で政府が援護対象区域の拡大も視野に検証する方針を表明したため、県と市は控訴を受け入れた。

県庁で取材に応じた湯崎英彦県知事は政府の検証方針について「非常に重い政治的意味がある。被爆者救済にかじを切った決断だと受け止めている」と評価。「法律論としては控訴せざるを得ない。少しでも早く被爆者の救済が実現できればよかったが、やむを得ない」と語った。松井一実市長は記者会見で「訴訟とは別に、黒い雨を体験された方の援護を早急に進めることを強く求めたい」と話した。

7月29日の判決は援護対象者の認定について体験者の証言を個々に吟味する必要があると指摘。「降雨域はより広範囲で原告らはいずれも暴露したと認められる」と述べ、原告84人全員への手帳交付を命じた。

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