「欲しいものは自由!」、副大統領候補のハリス氏とは

米大統領選
2020/8/12 11:48
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「いかなる違いや論争、争いごとがあっても私たちは一つの米国の家族だ」。11日、野党・民主党のバイデン前副大統領から副大統領候補に指名されたカマラ・ハリス上院議員(55)が自叙伝『私たちの真実』で国のビジョンとして強調した一節だ。多様性を重視する政治哲学は移民系家庭に育ったハリス氏の生い立ちを色濃く反映する。

ハリス氏は1964年に西部カリフォルニア州オークランドで生まれた。インド系移民の母親とジャマイカ系の父親はともに公民権運動に奔走し、マイノリティーの権利向上を目指した。抗議活動に頻繁に付き添っていたハリス氏は両親の考えを自然と受け継ぐ。幼少期に泣きじゃくる姿を見た母親がなだめようとして「何がほしいの」と尋ねると、ハリス氏は「フリーダム(自由)!」と答えた。

1970年、米カリフォルニア州バークレーの自宅アパート前で母と妹と写真に納まるカマラ・ハリス氏(左)=カマラ・ハリス陣営提供・AP

1970年、米カリフォルニア州バークレーの自宅アパート前で母と妹と写真に納まるカマラ・ハリス氏(左)=カマラ・ハリス陣営提供・AP

ハリス氏はマイノリティーの権利向上に思い入れを強めたが活動家の道を選ばなかった。権力の側に立つことも重要だと考えていたからだ。「活動家たちが行進して家のドアをたたいたら私は家の中から迎え入れる役目を果たしたいと思っていた」という。これが「革新派検察官」を目指すきっかけになる。

伝統的に黒人が多く通う首都ワシントンのハワード大を卒業し、カリフォルニア大法科大学院を修了。サンフランシスコ地区の検察官などを経て、2011年に同州司法長官にのぼりつめた。

一方で検察官時代には「中道派」の側面もうかがわせた。たとえば白人警官による黒人への相次ぐ暴行事件などを巡っては「警察の側に立つのか、警察(全体)に責任を問うのかどちらかを選べというのは誤っている」と考えていた。いまも反黒人差別を訴える急進左派が警察解体や警察予算削減を主張するが、ハリス氏はこうした考えには賛同していない。中道派にも左派にも支持を訴えかけやすいハリス氏の政治姿勢は、バイデン氏が副大統領候補に選んだ理由の一つとみられる。

17年にカリフォルニア州選出の上院議員に就任すると検察官として培った論戦力をすぐに発揮し、「若手のライジングスター(新星)」として一気に頭角を現す。

17年にロシア疑惑の渦中にあった当時のセッションズ司法長官の公聴会で「ロシアと非公開会合を持ちましたか」「適切とはどういう意味ですか」などと間髪入れずに次々と質問を投げかけた。セッションズ氏は「そんなに急がされたらついていけない。神経がすり減る」と不満を爆発させた。それでも「ロシアと接触しましたか」と淡々と質問を続けるハリス氏の度胸は米メディアを驚かせた。

バイデン前副大統領(右)と手を取り合うハリス氏(3月、ミシガン州デトロイト)=ロイター

バイデン前副大統領(右)と手を取り合うハリス氏(3月、ミシガン州デトロイト)=ロイター

論戦力の鋭さはバイデン氏も熟知する。19年6月の民主党の大統領候補指名争いの討論会で、人種差別撤廃に向けて異なる人種の子どもが共学になるよう学区外の学校に通うようにする制度に関し、ハリス氏は1970年代にバイデン氏が反対したと主張。「私の心は痛んだ」と訴えた。バイデン氏は反論に行き詰まり「持ち時間を使い切ってしまった」と逃げるしかなかった。

トランプ大統領は11日、ハリス氏がバイデン氏を人種差別主義者だと断じていたと主張。そのバイデン氏から副大統領候補に指名されたことなどを受けて「いかさまハリス」とのレッテル貼りをさっそく始めた。トランプ陣営はハリス氏の過去の言動を含めて厳しく精査する構えだ。

一方で米メディアによると、トランプ氏や長女イバンカ大統領補佐官は10年代前半にハリス氏に政治献金をしていた。トランプ氏の選挙陣営は11日の声明で、同氏は黒人女性ということでハリス氏に献金していたと主張。「トランプ氏が人種差別主義者だとの主張がすぐになくなると望んでいる」と訴えた。

米メディアによると、民主党内にも「ハリス氏は将来の大統領への野心が強すぎる」との声がある。政権奪還に向けて党内の結束を促す手腕もカギになる。

(ワシントン=中村亮)

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