高層ビル内部で農業、中国新興企業が各国に技術提供

36Kr
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/8/13 2:00
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従来型の農業のコストが上昇し続けるなか、高層建築物のなかで農業を行う「垂直農法」に注目が集まっている。垂直農法は天候や地形に制約されることがないため、人口問題と環境問題への有効な対処法の一つだとされている。米国の市場調査会社「Grand View Research」のリポートによれば、全世界の垂直農法の市場規模は2025年に99億ドル(約1兆円)に達するという。

植物工場の無人化システムを開発した(中科三安提供)

植物工場の無人化システムを開発した(中科三安提供)

垂直農法はまだ初期段階にある分野だが、海外ではすでに巨額の資金調達に成功したスタートアップが出始めている。中国では、「福建省中科生物股●(にんべんに分=SANANBIO、以下『中科三安』と略称)」が代表的だ。

中科三安は2015年に、中国科学院植物研究所と「福建三安集団(Fujian Sanan Group)」が共同で立ち上げた企業である。植物技術に強い前者とオプトエレクトロニクスに強い後者の特長を生かして、バイオテクノロジー、光生物学、室内農業などの研究を行い、現在では416項目の特許を取得しており、PCT国際特許と発明が60%近くを占める。

垂直農法に関して、中科三安は国内外で異なる試みをしている。中国国内では、福建省と安徽省に研究機関を設置すると同時に、北京、上海などの大都市で大型植物工場の稼働を始めている。海外では、米国ネバダ州で北米市場向けの園芸品種の開発、シンガポールで砂漠地帯や島国での室内農業技術の開発に取り組んでいる。

床面積1万平方メートルの葉物野菜の完全人工光源型植物工場を建設した(中科三安提供)

床面積1万平方メートルの葉物野菜の完全人工光源型植物工場を建設した(中科三安提供)

中科三安は2015年に、国内の他の研究機関とも協力し、床面積1万平米の葉物野菜完全人工光源型植物工場を世界ではじめて建設し、その後の4年間で技術革新を続けてきた。最新の成果は植物工場の無人化システム「UPLIFT」であり、このシステムでは建物の内部構造に基づき植物工場の建設プランを作成することができ、その後の種まき、根分け、日常管理等はすべて無人化できるという。無人化のほか、農薬の使用量を減らすこともできる。

同社は現在300種類以上の植物の栽培に成功しており、その中には葉物野菜、果物、ハーブ、食用花、薬草などがある。

同社のビジネスモデルは、技術革新を求める農家や、農業に新規参入しようとする企業など、法人向けにハードウエアや垂直農法のソリューションを提供するというもので、その後の技術指導も行う。現在福建省、安徽省、米国にある研究機関はすでに技術提供を始めており、全世界で自社所有と技術提供の植物工場の総床面積は12万平米に上る。米国のほか、カナダ、日本、韓国、シンガポール、UAE、英国、サウジアラビア、ドイツなどの20以上の植物工場、50以上の室内農業施設が中科三安の設備を使用している。

植物工場の未来について、中科三安の占卓総経理は、伝統的農法のコストは上がり続けているため、2025年前後に垂直農法と同水準になると見ている。そうなれば、植物工場が一気に普及するチャンスだとの認識を示した。

中科三安のほかの研究分野として、植物を使用したバイオリアクター開発、家庭用のプランター、教育用の植物工場展示場業務などがあり、現在着実に進展しているという。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/815218465093634)

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