リトアニア 狭い旧市街地、街全体をオープンカフェに

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、各国はロックダウン(都市封鎖)など厳しい措置を導入した。いったん感染者の増加ペースが鈍化しても、制限緩和後に感染は再拡大する傾向にある。感染防止と経済再開をどう両立するのか。危機をバネにした各国の取り組みからヒントを学ぶ。
1991年に旧ソ連から独立したバルト3国のリトアニア。感染の広がりを受け、3月中旬には食料品店や薬局を除く店の営業を禁じ、カフェも持ち帰りのみとした。
4月下旬にまず屋外営業、5月中旬には屋内での営業も条件付きで緩和されたが、首都ビリニュスは新たな困難に直面した。歴史ある旧市街では狭い道や店舗も多く、客席スペースは限られる。テーブルの間を2メートルあけるなどのソーシャルディスタンス(社会的距離)が確保できなかった。

同市が取った秘策は、街全体を「オープン・エア・カフェ」として無料で開放することだ。市に申請をしたカフェやレストランが公道や広場など屋外の公共スペースに椅子とテーブルを出し、客席として使えるようにした。たとえば旧市街中心部の大聖堂広場でワイングラスを傾け、気の置けない友人との食事を楽しむことができる。
「制約があるなかでも、近くの公共スペースを開放すればお店は営業を続けられる」とシマシウス市長は狙いを語る。「より多くの客を受け入れられるようになり、街も息を吹き返す」とリトアニアのホテル・レストラン協会のシスカウスキン会長も歓迎する。これまでに少なくとも約400の飲食店がこの試みに賛同し、市から利用の許可を受けた。
リトアニアは6月1日から欧州域内の市民らの入国を条件付きで許可し、7月10日からは日本を含む欧州域外の一部の国からも入国を認めた。夏休み時期には海外からの観光客も増える。都市空間を柔軟に使い、安心して食事ができる環境を整えれば、経済回復の後押しにもつながるとみている。
ビリニュスの「オープン・エア」の試みは芸術分野にも及ぶ。7月には市内に点在する広告スタンドを使い、地元のアーティスト作品100点を含む屋外展示会を開いた。気に入った作品があればアーティストに連絡を取ったり、購入したりすることもできる。
新型コロナの余波で画廊の閉館や展示会のキャンセルなどが相次ぎ、活動の場を失ったアーティストを支援する。「画廊は再開しても、人々が集まりにくい状況に変わりはない。ビリニュスはアートの屋根を取り払う」とシマシウス氏は力を込める。(随時掲載)