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北朝鮮スパイ捜査を警察へ 韓国、情報機関を改革

【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が情報機関「国家情報院」の改革案をまとめた。国内の情報活動を廃止し、北朝鮮スパイの捜査権も警察に移管する。政治介入などを繰り返してきた情報機関の改革は文大統領の悲願だが捜査力への影響を懸念する声も上がる。

国家情報院長に就任した朴智元氏。北朝鮮への違法送金事件に関わったとされる=聯合・ロイター

政府と与党が合意した改革案によると、国家情報院は「対外安保情報院」に変わる。国内の情報活動を廃止するほか、北朝鮮に関しては、情報収集は継続するがスパイ捜査権を警察に移管するなど、従来よりも管轄を大幅に制限する内容だ。関連法案を近く国会に提出する。

韓国の情報機関は、朴正熙元大統領が1961年に設けた中央情報部(KCIA)が源流だ。全斗煥政権で国家安全企画部と名を変え、金大中政権の99年に現在の国家情報院となった。時の政権による野党対策や、民主化運動の弾圧に利用された歴史もある。

73年に民主化指導者だった金大中氏が東京で拉致された事件は、KCIAの主導だったことが判明している。最近でも保守系の李明博政権下で、国家情報院がインターネットで野党候補を攻撃する組織的な世論工作を展開し、当時の国家情報院長が起訴された。

このため情報機関の改革は検察改革などと併せ、革新系勢力が唱えてきた。文氏は17年大統領選の公約で、国家情報院の政治介入やスパイ捏造(ねつぞう)事件を防ぐための改革実施を明記していた。

北朝鮮情報に関して米中央情報局(CIA)と比べて国家情報院が優位にあるのは、脱北者や中国と北朝鮮の境界に配置した要員を通じた人的情報にあるとされる。情報機関出身者や保守系メディアは、今回の改革による捜査権の切り離しで防諜(ぼうちょう)能力が低下する可能性を懸念している。

北朝鮮のスパイは欧州や日本、東南アジアを拠点としている。韓国警察の海外情報網は乏しく、捜査には他国の機関との連携が不可欠だ。関係者は「国家情報院はCIAや日本の内閣情報調査室などとやりとりしている。その秘密情報を警察と共有できるかが問題だ」と指摘している。

捜査への影響を懸念する声が上がる中、文氏は情報機関に別の期待を寄せている。行き詰まった南北関係の打開だ。文氏は7月以降、国家情報院の幹部に南北融和を推進する人物を相次ぎ登用している。

院長に起用したのは金大中政権で大統領秘書室長を務めた前国会議員の朴智元(パク・チウォン)氏で、過去に北朝鮮への違法送金事件に関わったとされる。予算を握る企画調整室長には、80年代の反米活動家で文政権の外交政策に影響力を持つ朴善源(パク・ソンウォン)氏を充てた。

朴善源氏は盧武鉉政権で大統領府の秘書官を務め、北朝鮮の資金洗浄の舞台となったマカオの銀行、バンコ・デルタ・アジア(BDA)と北朝鮮の取引を禁じる制裁の解除へ奔走した。外交筋は文政権の狙いを「情報機関を使い、行き詰まった北朝鮮との対話を再開させたいのではないか」と見ている。

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