今日も走ろう(鏑木毅)

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理想型でなくても大会を 五輪開催支持、原点立ち戻る

Tokyoオリパラ
2020/8/13 3:00
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秋もほとんどのトレイルランニング大会が中止となった。そんな中、感染対策を徹底して地元との調整ができた大会も数は少ないけれどある。参加するランナーに聞くと出場に向けて努力するだけで仕事環境の変化、将来への不安などを忘れることができるという。そのような声を聞き、私が実行委員長を務めるウルトラトレイル・マウントフジ(来年4月予定)も開催を前提に準備を進めている。

感染対策を施し、来年4月開催をめざす(13年のウルトラトレイル・マウントフジ)

感染対策を施し、来年4月開催をめざす(13年のウルトラトレイル・マウントフジ)

現段階で中止と判断することは、社会状況を鑑みれば受け入れられやすいだろうし気苦労も少ない。それでもこの大会に思いをはせ、日々努力を続けているランナーたちを思うと簡単に諦める気持ちになれない。一方で入念な感染対策を施そうとすると、理想とするレース本来のスタイルをかなり変えざるを得なくなる。開催に向けては、さまざまな課題をこれからクリアしていかなければならないだろう。ただ、たとえ本来の競技性を崩したとしても、感染予防の対策を講じて大会を開くことが、現在の社会を取り巻く閉塞感を打ち破る上で大切なのではないかと信じている。

今や全国的人気の箱根駅伝も昭和18年(1943年)の大会は特別だったという。戦時下でいったん中止とされたものを、関係者の努力で1回限りの開催にこぎつけたものの、靖国神社―箱根神社―靖国神社という本来のスタイルを大幅に変更したレースに。学徒出陣で最後になるかもしれない駅伝をなんとかして走らせてやりたいという陸上関係者の思いが実ったのだった。

思想的な統制が敷かれた戦時下と、コロナ禍での開催リスクを同じ物差しで比べることはできないかもしれないけれど、スポーツどころではない世相下にあえて開催したことが、選手や関係者にどれだけの勇気を与えたことだろう。現在の隆盛につながる箱根駅伝の大きな布石となったことは間違いない。

先月7月24日は本来であれば東京オリンピックの開会式が行われる日だった。1年先に延期となったとはいえ、新型コロナウイルスの影響で先行きは全くわからない。来夏開催を支持する世論は3分の1程度にとどまり、さらに数千億円もの追加負担を要する見込みという。コロナ禍を人類が乗り越えた金字塔として開催する、といった美談のシナリオを描ききるのは相当難しそうだ。

それでも私は、感染防止に最大限配慮をし、費用負担を極力減らして実施すべきだと思う。それは「草五輪」で、従来の豪華な巨大イベントとはかけ離れたものになるかもしれない。そんな五輪なら開く意味はないという意見も出てこようが、本当にそうだろうか。商業主義や過度なナショナリズムに押し流され、失われつつある五輪の原点に立ち戻り、持続可能な大会であり続けるための実験的五輪。必ず実り多きものになるだろう。

政治的、商業的な駆け引きにとらわれず柔軟な考え、大胆な発想と決断が必要で、危機的状況下だからこそみんなが受け入れられるはず。五輪の転換点として後世に長く記憶される大会にしてほしい。

(プロトレイルランナー)

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