タイ、反政府運動が拡大 タブーの王室批判も
【バンコク=村松洋兵】タイで学生らによる反政府運動が拡大している。10日にはバンコク近郊の大学で1万人規模が参加する集会が開かれた。批判の矛先はプラユット政権だけでなく、絶対的な権威を持つ王室にも向かっている。今後もデモが予定されており、混乱が広がる可能性がある。

タイでは軍政の流れをくむプラユット政権が新型コロナウイルス対策を名目に強権を維持しているとして、7月中旬以降に反政府デモが広がった。10日、名門校の一つであるタマサート大学で開かれた集会はこれまでで最大規模となった。
学生らは政権退陣や、強権維持を可能にする憲法の改正を求めている。10日の集会では王室に対する不敬罪の撤廃や、王室財産の管理見直しも訴えた。王室批判はタブーとされるが、王室が軍事クーデターを承認したことなどに不満を持っている。学生らは王太后誕生日で祝日の12日にも大規模集会を計画している。
10日にはバンコクの国会議事堂前で反政府団体と保守派の双方が同時に集会を開く場面もあった。プラユット首相は11日、「デモは権利だが、法を犯せば罰せられる」と述べ、過激な行動をけん制した。情報統制を担当するプッティポン・デジタル経済社会相は「人々が異なる政治思想を持つのは自然だが、他人の権利を侵してはならない」と自制を促した。
2014年の軍事クーデターを主導したプラユット首相は、19年の民政移管後も強権的な政治手法を取っている。新型コロナ対策では3月末に非常事態宣言を発令し、大規模な集会を禁じた。
国民からの批判を受けて集会を認める方針を示したものの、7日には反政府運動のリーダー格である人権派弁護士ら2人が扇動などの容疑で逮捕された。8日に保釈されたものの、学生らは反発を強めている。