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五輪・パラ競技の強化練習、感染対策との両立に工夫

NTCでの合宿再開直後、距離を取って監督の話を聞く選手たち=日本バレーボール協会提供

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、五輪・パラリンピック各競技が強化拠点とする味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)と国立スポーツ科学センター(JISS)にアスリートが戻ってきた。「新たな日常」に対応したガイドラインのもと、今は毎日約100人が利用。感染予防とトレーニングの両立を工夫する日々が続いている。

「コロナの中で合宿をさせてもらい、来年の五輪へレベルアップできる機会をつくってもらった。1日も無駄にできないという覚悟が強くなった」。7月下旬、東京・西が丘のNTC内のコートからオンライン取材に応じたバレーボール男子日本代表の得点源、西田有志はこう力を込めた。

男子代表は6月20日にエースの石川祐希らわずか5人で合宿を再開。全員に抗体検査を行い、段階的に人数や練習内容を増やしてきた。女子代表もPCR検査を経て7月からNTC入り。練習以外の時間はマスク着用を徹底するなどしつつ、今月2日には男女とも紅白戦を披露した。

対人競技のレスリングも7月2日、NTCで約3カ月半ぶりに合宿を再開した。参加者を五輪代表ら少数に絞ったり、1つのマットで練習できる人数を制限したりして「密」の回避に工夫を凝らす。「ウイルスを持ち込まないのがポイント。何がベストか考えていく」と日本協会の西口茂樹強化本部長は話す。

緊急事態宣言を受けて閉鎖されたNTCとJISSの利用が約2カ月ぶりに再開されたのは5月27日のこと。「練習前にボールとフロアの消毒徹底」(バレーボール)といったように、各競技団体(NF)はNTCとJISS内外での練習実施、大会開催の際のガイドラインを策定した。感染状況や自治体の注意喚起に留意しながら随時、改訂を加えて運用している。

「競技に打ち込む選手を守るため、安心・安全な環境をつくりたい」(JISSの久木留毅センター長)との言葉通り、施設内の感染対策は徹底している。来館者には2週間前からの検温結果の提出を求め、1室を2人で使っていた宿泊施設は1人での利用に変更した。他競技の選手との交流の場でもあった食堂は座席が半分近く減り、ビュッフェ形式を取りやめに。仕切りも設置され、ぐっと静かになったという。

これまでに両施設を拠点とする五輪16競技のうち13競技が合宿や個人練習を実施。パラも多くの競技が利用を再開しているが、全てがコロナの感染拡大前のように戻っているわけではない。

バドミントンやハンドボールなどは全国に点在する代表選手の移動のリスクなどから合宿を開催できておらず、稽古内容で「密」が生まれやすい柔道も個人利用にとどまる。一度は合宿を再開したレスリングも都内の感染者数増加を受けて7月22日以降の合宿を再び取りやめた。しばらくは感染状況や選手の心情も考慮しながら、慎重な活動が続きそうだ。

閉鎖中もネットで支える


 トレーニングと医科学の拠点として開所20年目を迎えたJISS、2008年に本格稼働したNTCの両施設にとっても、約2カ月の長期閉鎖は初めてのことだった。JISSの久木留毅センター長に対応状況や施設の果たすべき役割を聞いた。
 ――閉鎖中の対応は。
JISSの久木留毅センター長
 「不安を感じた選手が多かったようで、特別なリハビリや心理相談は公共交通機関を使わない訪問のみ診療所で対応した。栄養相談などはリモートで行い、のべ2千人の利用があった」
 「特設サイトやSNS(交流サイト)ではコロナの基礎情報から宅配の食事を利用するポイント、不安との付き合い方などを発信してきた。自宅でできるトレーニング動画も掲載し、ツイッターへのアクセスは約100万件もあった」
 ――選手の活動再開に当たって気をつけたことは。
 「試合のなかった選手が急に強度の高い練習を再開したら、普段よりもアキレスけんを断裂する事例が多かったという海外の研究がある。NFからは『とにかく早く施設を開けて』との声もあったが、こうした情報は意外と知られていなかった。コロナ対策に加え、選手の心身への影響について根拠に基づいた情報を提供するよう心がけた」
 ――両施設は設立以来、五輪・パラリンピックでのメダル獲得を下支えしてきた。
 「トップ選手の調整の経験を幅広く展開し、国民の健康につなげることが国立の施設の役割だと考えてきた。『コロナ太り』も報告され、運動や栄養、休養が大切なのは選手も国民も同じ。普段通り運動できない選手がどう体力を維持しているのか。そうした知見は高齢者や子供にも十分反映できる」
 「夢と希望と感動だけではもう理解してもらえないのが今の時代。『スポーツだけ特別でいいのか』と言われないようにすることも大切だ。選手を長く医科学面で支えてきた成果を、これまで以上に社会に発信していきたい」

(鱸正人)

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