SPORTSデモクラシー

フォローする

コロナが促す前例踏襲の打破 学生スポーツ界に新風
ドーム社長 安田秀一

(1/2ページ)
2020/9/1 5:30
保存
共有
印刷
その他

関東学連のアメフトチーム代表者は全米大学体育協会(NCAA)のフェアな精神に敬意をもっているという(2019年1月、NCAAの試合)=AP

関東学連のアメフトチーム代表者は全米大学体育協会(NCAA)のフェアな精神に敬意をもっているという(2019年1月、NCAAの試合)=AP

一部制限はあるものの、プロ野球やサッカーのJリーグを楽しめる日々が戻ってきました。アマチュアの学生スポーツも動き出しており、その中にはコロナ禍でのニューノーマル(新常態)を生かした挑戦を始めている競技や大学があるようです。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏の連載コラム。今回は日本の学生スポーツが長年抱える問題を解決に導くような先駆的な取り組みを取り上げています。

◇   ◇   ◇

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている中、プロだけでなく学生スポーツでも少しずつ練習や試合を再開する動きが始まっています。前回のコラムで僕は、この国のスポーツが持続可能な仕組みとなるために、このコロナ禍をいったん立ち止まって考える良い機会とすべきだと書かせていただきました。今回は、そんな中にあって、そうした「前向きの変化につながるのでは」と期待している学生スポーツ界の新しい動きを紹介したいと思います。

それは僕自身が関わりの深いアメリカンフットボールです。関東学生アメリカンフットボール連盟において、各校のチーム代表である監督会と連盟理事会が協力して運営ルールなどを決めるという流れが出てきました。「そんなの当たり前じゃないのか!?」と感じられた方は、まっとうな常識をお持ちだと思いますし、僕自身もそう思います。ただ従前のスタイル(慣習? 仕組み?)では、連盟側が一方的にルールを決めて、そのルールにチームが従う、というのが「当たり前」でした。その他の競技では、現在においてもまさにそんな状態であることは想像に難くありません。

■「機会の平等」を実現へ

チームの代表と主催者である連盟や協会が、その競技や大会の目的、あるいはその時の状況に応じて協力してルールを決める。例えば、酷暑期の試合のナイター開催を増やして熱中症対策をしたり、コロナの影響による活動休止期間をルール化したりして、安全に最大限に配慮しながら、シーズンにむけた準備を整える。

結果として「各チームの条件を平等にしていく」という効果が期待でき始めています。現実としては、各チーム事情には大きな差異があるので、ルールとして踏み込める範囲は限定的ではありますが、将来の目指す方向性、意識は一致していると聞いています。つまり「教育としてのスポーツ」そして「機会の平等」です。

コロナ禍によって、ほとんどの大学が学生に対してスポーツを含めた課外活動を禁止しました。それによって、ある意味各大学の運動部は練習という側面においては初めて同じ条件になりました。未曽有の事象ですから、それぞれのチームや学校、あるいは連盟によって練習や試合の可否についての前例がなく、運営の大きな判断軸であった「慣習」が機能しなくなりました。そのうえで、練習を再開してリーグ戦を始めるための準備を進めていこうとすれば、それぞれのチーム事情は無視できません。各校の条件の違いが浮き彫りになり、それによって「不公平感」が顕在化し、当事者同士の意識が「機会の平等」に向いていくのは自然な流れであると言えます。

学生たちが寮生活で練習をすぐに再開できるチームもあれば、自宅通いの学生が中心で、練習どころか通学さえ難しいチームもある。学校によっては課外活動の再開を認めないところもある。この状況で公平なリーグ戦を行うにはどうしたらいいか。この問題と真剣に向き合えば、これまで仕方ないと思って受け入れてきた状況が、実は「おかしい」という気付きも生まれてくるでしょう。前回のコラムで「コロナ禍をいったん立ち止まって、考える良い機会」と記述させてもらったのは、こういうことです。

すなわち、ある大学はスポーツ推薦で100人も選手を取り、1年のうち360日、1日6時間以上も練習しているのに、ある大学はスポーツ推薦枠ゼロ、練習は年間200日で1日3時間程度。ここまで条件の違うチーム同士を競わせて決めた日本一や関東一に果たしてどんな意味があるのだろうか。スポーツ推薦の学生をかき集めて日本一になることや学業を無視して練習することなど、ドーピングによって成果を上げるのとたいして変わらないという考え方さえできると思います。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップスポーツトップ

SPORTSデモクラシー 一覧

フォローする
オリンピアンの皆川賢太郎さん(左)と松田丈志さん


 新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済が打撃を受けています。人口減少が進む地方では特に深刻なようです。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏は久しぶりに …続き (9/29)

関東学連のアメフトチーム代表者は全米大学体育協会(NCAA)のフェアな精神に敬意をもっているという(2019年1月、NCAAの試合)=APAP


 一部制限はあるものの、プロ野球やサッカーのJリーグを楽しめる日々が戻ってきました。アマチュアの学生スポーツも動き出しており、その中にはコロナ禍でのニューノーマル(新常態)を生かした挑戦を始めている競 …続き (9/1)

「夏の甲子園」が中止になったのは戦後初めて(2019年8月、第101回大会の開会式)=共同共同


 新型コロナウイルスの影響で、今夏に開幕する予定だった第102回全国高校野球選手権大会が中止になりました。春の第92回選抜大会に続く中止で、甲子園を夢見てきた多くの高校球児は受け止めきれないでしょう。 …続き (5/30)

ハイライト・スポーツ

[PR]