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「半沢直樹」の控えめスーツ、派手なストライプと対決

コラムニスト いであつし

今期ドラマで快進撃を続ける堺雅人さん主演の「半沢直樹」(c)TBS
記者会見でのスーツ姿、人気ドラマの主人公のファッションなど、メディアで話題にのぼる人の着こなしは気になるもの。そんな「ニュースな人」のファッションの背景にあるものとは。男性ファッションに詳しいコラムニスト、いであつし氏が解説します。



「サラリーマン半沢」のスタイルは…

コロナ禍で放送日が遅れて満を持して始まったTBSの日曜劇場「半沢直樹」。毎回20%超えの高視聴率で、最近のTVドラマはつまらないという昨今の風潮をまさに「倍返し」で景気よく吹き飛ばしてくれております。そこで今回は、絶好調の堺雅人演じる半沢直樹のスーツスタイルについて検証してみたい。

最初に言っておきますが、決して半沢直樹は、メンズファッション誌や当ウェブ、NIKKEI STYLE Men's Fashionで呼称される、いわゆるビジネスマンではない。ドラマでも度々「いいか、俺たちはサラリーマンだ!」といったセリフが出てくるように、そう、半沢直樹はサラリーマンなのだ。

サラリーマンとビジネスマンのスーツは似ているようでまったく非なるものである。どっちがリアルガチかと言ったら、もちろん、サラリーマンのスーツスタイルだ。

例えば、よくニュースで新橋駅前のSL広場で「え、今日の東京のコロナの感染者数ついに400人超えちゃったんですか! でも経済も回して行かないと仕方ないですよねぇ~」なんてコメントをしている、やきとん屋で一杯やって赤ら顔の会社帰りのマスク姿のお父さんたち。それがサラリーマンです。

今の時期はクールビズだからノーネクタイで半袖のシャツで、下手すると上着も着ていません。スーツスタイル、なんていうほどお洒落(しゃれ)ではありませんから。伊勢丹メンズ館やセレクトショップで何万円もするスーツなんかホイホイ買ってるわけありませんから。そんなことより、毎日ランチにいくらかけるかとか、少ないお小遣いからやりくりして、奥さんに内緒でこっそり趣味のランニング用にナイキの最新のシューズとかバス釣り用のリールとかをネットで安く探して買っちゃったりしてるんです。休日はユニクロ。スーツは量販店でオールオッケーなのだ。

靴やかばんは黒が多い(c)TBS

では、具体的に半沢直樹のスーツスタイルとはどういったものか。一言でいえば、控えめ。

お洒落に言えば「アンダーステートメント」(目立たず上品な格好)な着こなしである。やはりサラリーマンとはいえ、そこはバンカーですからね。新橋駅前のSL広場でクールビズのマスク姿でコメントするオヤジリーマンとはちょっと違うのだ。

靴・ベルト・かばんは黒 そしてシャツは…

まずスーツ。いつも黒のスーツで、ボタンは2つボタン、太くもなく細くもない絶妙なラペル幅。パンツはノータックで裾はシングル仕上げで、ハーフクッション丈。ポケットチーフは挿さず、ちゃんと立っている時にはボタンは留めるという、基本的な所作も守っている。

白のレギュラーカラーのシャツがよく似合う(c)TBS

靴とベルトとかばんと腕時計は、黒で統一。かばんは大口開きのダレスバッグ、靴はひも靴(おそらく内羽根式のプレーントゥとかストレートチップ)、腕時計はスクエアのアラビア文字。倍返しのシーンでよく見せるスマホは、水戸黄門の印籠代わりである。

注目すべきはVゾーンだ。半沢直樹は白のレギュラーカラーシャツしか着ない。そして合わせるタイは、ほぼほぼ黒に小さめのドット柄か、シルバーとネイビーのレジメンタルタイ。ディンプル(えくぼ)を作らずにプレーンノットで締めている。ただし、勝負の時にはヨメの上戸彩から誕生日プレゼントでもらったパステルブルーのタイを着用する。ちなみに半沢直樹は帰宅してヨメと夕飯を食べる時でも、ジャージーなどには絶対に着替えずに、スーツの上着を脱いでタイだけ外して食事をしている。

賀来賢人が演じる森山(左)のスーツ は……(c)TBS

今回からレギュラーになった賀来賢人演じる部下のロスジェネ世代の森山のスーツスタイルの方が、むしろ今どきのビジネスマンっぽい。おそらく着ているスーツは量販店のつるしではなくツープライススーツだろう。タイは勝負でなくてもパステル系。上司が半沢直樹だったから何の心配もなかったが、半沢から離れてしまったらかばんもビジネスリュックに変えて、尾上松也演じるスパイラル社の瀬名社長と2人で銀座のコリドー街でナンパとかしちゃうに違いないぞ。

敵役は派手なスリーピースに…

今回の半沢直樹の戦いを一言でいったら、「ネクタイの結び目の大きさ対決」である。味方で唯一派手なスーツスタイルのミッチー(及川光博)演じる渡真利は別として、敵役の香川照之演じる大和田常務も、市川猿之助演じる伊佐山も、片岡愛之助演じるおねぇキャラの黒崎も、いつもテカテカした生地のストライプの派手なスリーピースに派手なチーフを挿して、派手なタイをごん太(ぶと)な結び目で締めている。

強い個性を放つキャラ。スーツも独特だ(左から役柄名)渡真利、黒崎、中野渡、大和田(c)TBS

これが歌舞伎まさりのオーバーアクションなセリフ回し&顔芸と相まって、いやぁ~、これほどネクタイの結び目とスリーピーススーツがヒール演技に一役買っているドラマはない。余談ですが、スーツファッションにあまり興味がない女性から見たら、半沢直樹の悪役はみんな伊勢丹メンズ館のスーツ売り場の店員さんに見えるそうです。なんとなく、スゲェー納得。

市川猿之助が演じる伊佐山(左)はストライプが目立つスーツ(c)TBS

いよいよドラマは航空会社再建の戦いへと突入。ますます半沢直樹の倍返しが楽しみになってきた。

次なる敵はごん太の結び目のスリーピーススーツではなく、航空会社と政権である。筆者の知り合いの某航空会社で客室乗務員主任をしていた女性から聞いた話によると、航空会社の役員クラスともなると、派手なストライプとかスリーピースとか着ている人なんて見たことがなくて、みんな上質でこぎれいなグレーのスーツなのだそうだ。たぶん銀座の和光とか英国屋系のオーダースーツでしょうね。となると、後半戦は「控えめスーツ対決」になりそうだ。

後半戦の新敵キャラ、江口のりこ演じる「い・ま・じゃ・ない」の女性政治家の白井国土交通大臣の動向も見逃せない。さすがに女性のキャリアファッションには詳しくないが、やっぱあの白いスカートスーツのモデルって、あの方ですかね?

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN'S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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