ベラルーシ大統領選投票開始、独裁維持へ「政変」警戒

2020/8/9 16:21 (2020/8/9 20:05更新)
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6選に危機感を募らせたルカシェンコ氏は反体制派への圧力を強めた(4日、ミンスク)=AP

6選に危機感を募らせたルカシェンコ氏は反体制派への圧力を強めた(4日、ミンスク)=AP

【モスクワ=小川知世】旧ソ連のベラルーシで9日、大統領選の投票が始まった。独裁的な体制を敷く現職のアレクサンドル・ルカシェンコ氏(65)が事前に有力候補を排除し、6選を決めるとみられる。反体制派の女性候補が支持を広げて猛追しており、政権は投票後の抗議運動の拡大に警戒を強めている。

即日開票し、10日午前にも大勢が判明する見通し。大統領任期は5年で、ルカシェンコ氏を含む5人が争う。過半数を得票した候補がいなければ、上位2人で23日までに決選投票を実施する。

ルカシェンコ氏は5期26年を務め「欧州最後の独裁者」と呼ばれる。年金生活者などが主な支持層で、4日の演説では外交関係の多様化や平均賃金の倍増を表明した。

当局は有力な対立候補の出馬を認めず、一部を拘束した。拘束された人気ブロガーの夫に代わって立候補した主婦のスウェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)に反体制派の支持が結集した。

チハノフスカヤ氏は「半年以内の公正な大統領選のやり直し」を公約に掲げる。独裁体制の長期化に対する反発に加え、新型コロナウイルス対策の不備や経済悪化による政権への不満の受け皿になり、7月末に首都ミンスクで開いた集会には6万人超が参加した。

拘束された夫に代わり立候補したチハノフスカヤ氏に反体制派の支持が結集した(2日、ブレスト)=AP

拘束された夫に代わり立候補したチハノフスカヤ氏に反体制派の支持が結集した(2日、ブレスト)=AP

かつてない逆風にさらされるルカシェンコ氏は危機感を強めている。「ミンスクで大量虐殺の試みが明らかになった」。4日の演説では大統領選に向け「政変」が画策されていると主張し、投票を前に国の安定を守る構えを強調してみせた。

7月下旬には治安当局がロシアの民間軍事会社の戦闘員33人を拘束し、騒乱を画策した容疑で捜査を始めた。チハノフスカヤ氏の夫ら反体制派にも共謀した疑いをかけた。8日には同氏の選対幹部を一時拘束し、反体制派への圧力を強めた。

ルカシェンコ氏の得票数の水増しといった不正が行われる懸念も強い。ベラルーシの選挙では過去にも欧州安保協力機構(OSCE)の監視団が不正を指摘してきた。感染対策を理由に監視活動が制限された今回は公正な選挙の実施が一段と疑問視され、ルカシェンコ氏が大差で「勝利」を宣言する可能性が高い。

注目されるのは選挙結果を受け、不正を訴える抗議運動がどこまで広がるかだ。治安当局と抗議運動の参加者の間で激しい衝突が起きれば、2014年に隣国ウクライナで親ロシア派政権が打倒されたように、ベラルーシ情勢が不安定化しかねないとの見方がある。

ロシア人の拘束などでベラルーシとの同盟関係が冷え込むロシアは情勢を注視している。プーチン大統領は7日にルカシェンコ氏と電話協議し、「内政の安定と大統領選の平穏な実施に関心がある」と伝えた。隣国での政変を危ぶむロシアが介入に乗り出す事態になれば、欧米とロシアとの関係にも影響しそうだ。

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