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メジャー7年目の貫禄 田中、自然体で筒香を圧倒
スポーツライター 杉浦大介

2020/8/10 3:00
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"大先輩"の貫禄は十分だった。現地8月7日のレイズ戦で、ヤンキースの田中将大は5回1安打の完璧なピッチング。今季からメジャー入りした筒香嘉智も2打数無安打に封じ、日米通じての初対決に完勝した。

日本時代を含め公式戦で初対戦したヤンキース先発の田中とレイズ・筒香=ゲッティ共同

日本時代を含め公式戦で初対戦したヤンキース先発の田中とレイズ・筒香=ゲッティ共同

田中のうまさが光った初顔合わせ

「日本でいう"大先輩"。本場アメリカで活躍されている素晴らしい投手ですので、対戦する中でいろいろなことを学ばせていただけると思います」

試合前、筒香は田中に対してそんな気遣いにあふれた言葉を残していたが、実際に打席でその巧みさを存分に感じたのではないか。

2回の初打席では内角の速球で詰まらされて一邪飛。続く第2打席は低めのスプリットを打って中飛に終わった。「捉えられていたんでアウトになってラッキー」と田中は控えめに振り返ったが、複数の球種、コースをうまく使ったがゆえに、筒香に踏み込みを許さなかったとも考えられる。

「自然体で、いつもの自分でいこうという中でも、しっかり腕を振る時は振って投げられたと思います。セルフコントロールという部分でも、きょうはうまくいったっていうところはありました」

試合後、田中は自身の最新の登板を冷静にそう分析していた。"日本人対決"というといまだに周囲は沸き立つが、そんな舞台でも普段通りの力が出せる落ち着きこそがメジャー7年目のベテランの武器になっているのだろう。

レイズ戦に先発し、5回1安打無失点と好投したヤンキース・田中=USA TODAY

レイズ戦に先発し、5回1安打無失点と好投したヤンキース・田中=USA TODAY

契約最終年、予想外の出遅れ

今季は田中にとって、思い通りのシーズンになっているとは到底言い難い。新型コロナウイルスのおかげで2020年は世界中の人々にとって辛い年になっているが、さらに田中はサマーキャンプ初日に不運としか言いようがないアクシデントを味わった。7月4日、試合形式の練習でマウンドに立った際、同僚ジャンカルロ・スタントンが放った112マイル(時速約180キロ)の弾丸ライナーが頭を直撃。直後、フィールドは静まりかえり、アーロン・ブーン監督が「(田中の)生命の心配をした」と述べたほどの衝撃的なシーンだった。

状況を考えれば、軽い脳振盪(しんとう)で済んだのはラッキーだった。それでも調整は遅れ、田中は開幕ローテーションから外れることを余儀なくされた。その後、復帰後の2度の先発機会でも球数制限を課されており、7年契約の最終年にフラストレーションをため込んでいても不思議はないところではある。

対戦形式の練習で打球を頭部に受け、トレーナーらのチェックを受けるヤンキース・田中(中央)=AP

対戦形式の練習で打球を頭部に受け、トレーナーらのチェックを受けるヤンキース・田中(中央)=AP

ただ、心強いのは、最新のレイズ戦でも顕著だったように、田中には必要以上の焦燥感は感じられないことだ。1日のレッドソックス戦では3回途中で降板したが、「一つ一つステップを踏んで行ければ」と平然。7日のレイズ戦では無失点に抑えながらも勝ち星はつかなかったが、「今日のような日もあると割り切っていかなければ」と落ち着いた口調で述べていた。

コントロールできないことは気にしない

この自然体の姿勢はメジャーで6年連続二桁勝利という実績を残してきた投手ならではなのかもしれない。ハイレベルなア・リーグ東地区で、1、2年ではなく、長いスパンで成績を残せる底力を示してきた。その過程で、ファン、メディアの厳しいニューヨークでも、ヤンキースが田中と結んだ7年1億5500万ドルの大型契約は成功だったと評価されるようになった。

向上心を保ち、フォームの修正にも挑戦し続けるヤンキース・田中=球団提供・共同

向上心を保ち、フォームの修正にも挑戦し続けるヤンキース・田中=球団提供・共同

それでも本人は現状に安心しているわけではなく、向上心を保ち、2月の春季キャンプ時から様々な形でフォーム修正に挑んでいる。たった60試合のシーズンは時間との戦いにもなるが、「自分にコントロールできないことは気にしない」という背番号19の姿勢に変化はない。今季から11年ぶりのワインドアップでの投球に変えたが、急ぎすぎず、それでいて怠らず、これまで通り、自身のペースで着実に階段を上っている印象がある。

手痛いアクシデントの後でも、2試合を終えて防御率1.17と数字は上質。それでいて伸びしろは明らかに残しており、今後、残り45戦ほどのシーズンの中でどれだけ研ぎ澄ませていけるか。激動の2020年、心身の成熟と安定を感じさせる田中がどんな風に仕上げていくかが楽しみでもある。

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