長いトンネルの出口見えた 阪神・藤浪に復調気配

復活というには早計かもしれないが、長いトンネルの出口が見えてきたことは間違いない。ここ数年、制球難から本来の自分を見失っていた阪神の藤浪晋太郎(26)が今季3度の先発登板で復調の気配をみせている。右腕を苦悩させてきた与死球は今季、ここまでゼロ。勝ち星にこそ恵まれないが、涼しい顔で150キロ超を連発する姿は自信を取り戻しつつある証しだろう。(記録は全て10日現在)
今季3度目の先発登板となった5日の巨人戦(甲子園)。藤浪は立ち上がりから155キロ前後の速球をテンポよく投げ込んだ。死球を与えないように制球重視といった昨季までの縮こまったような投球ではなかった。
相手先発の高卒2年目の20歳、戸郷翔征も初回から150キロ前後の直球を連発。2人の異才による快速球の競演は見る者をほれぼれとさせるものがあり、この日甲子園に訪れた4958人のお客さんはプロの投手の力量を堪能したに違いない。
■4番岡本に打たれた157キロ
六回のピンチで迎えた4番岡本和真への1球に藤浪のすごみとともに課題も凝縮されていた。初球に投じた外角への157キロを右翼フェンス直撃の2点二塁打された。球数が80球を超えた苦しい局面でマークしたこの日最速タイの球威は、この右腕がただ者ではないことを改めて印象づけた。この剛速球を右方向にはじき返した岡本の打棒を褒めるべきだろう。
ただ、外角直球に的を絞られていた観もあった。死球への不安が拭い切れていないからか、藤浪は今季、外角を主体とした投球に徹している。この場面も「(岡本が)ストレートを待っているのは分かっていたが、勝負にいった。ファウルを取りたかったが、向こうのスイングが上だった」と試合後、藤浪は振り返った。

序盤こそストライクゾーンの外側しか使わなくても球威でねじ伏せることができるが、3巡目に入れば、さすがにとらえられる。今季3度の登板全てで六回か七回に失点していることが、外角一辺倒の投球の限界を物語っている。与死球を巡るトラウマを克服し、勝負どころで自信を持って内角にも投げ込めるかが、2年ぶりの勝利をたぐり寄せるカギになりそうだ。
■「手ごわい投手が戻ってきた」
相手打線が抜け球を恐れて踏み込めないことを差し引いても、3試合で21イニング、防御率2.57は立派な数字である。与四球も8個と1試合平均3個未満。これも本格派・藤浪の投球スタイルを考えれば合格点だろう。
春のキャンプで受けた元中日・山本昌氏の指導が奏功したのか、復調しつつあるのは間違いない。周囲の見る目も変わってきており、巨人の原辰徳監督は「安定感がありましたね。非常に手ごわいピッチャーが戻ってきたという感じがします」と話した。
あと必要なのは3試合でわずか3得点と藤浪の登板時にはなぜかつれない味方打線の奮起と、相手打者の内角を攻める勇気だけだ。「(5日の投球内容は)そんなに悪くなかった。反省点もあるけど、次につながると思う」と藤浪。2季ぶりの白星まで、もう少しである。
(田村城)