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警告後も広告、胎児に薬害被害 製薬会社の回収不十分

佐藤嗣道さん(1)いしずえ(サリドマイド福祉センター)理事長

私は、手に障害をもって生まれた。左手は肘から先が短く、手が内側に曲がっている。57歳になった今でも赤ん坊のような小さな親指は付いているだけで機能せず、残りの4本の指は関節が曲がったまま固まっている。右手もやや短く、親指は機能するが小さく弱い。

サリドマイドが配合された胃腸薬「プロバンM」を母が飲んだのは、1962年1月か2月。何となく胃の調子が悪く、近所の薬局で勧められるままに購入した。「つわりの初期だったかもしれない」と母は言っていた。サリドマイドが胎児に奇形を起こす時期(過敏期)は、最終月経後30日から60日前後。妊娠に気づく少し前か気づく頃である。その年の10月、私は札幌で生まれた。北海道大学小児科の梶井正先生が日本でもサリドマイド児が生まれていることを論文で発表し、9月に薬の回収が発表された後だった。

この薬が最初に開発されたドイツでは、その前年、61年11月にレンツ博士(ハンブルク大学小児科)が警告を発し、直ちに販売停止と回収が発表された。しかし、日本では厚生省(当時)が「レンツ警告には科学的根拠がない」として何の対策も取らず、新たに別の製薬会社にこの薬の製造販売を許可した。製薬会社は、レンツ警告を境に、サリドマイドを主成分とする鎮静・催眠薬「イソミン」の新聞広告をやめる一方、胃腸薬「プロバンM」の広告を飛躍的に増やした。日本では、母と同様にレンツ警告後に多くの妊婦がこの薬を服用し、被害が拡大した。回収の発表は、レンツ警告から10カ月後のことであった。

北大の医師から障害の原因がサリドマイドであると聞かされた父はデパートの薬売り場に見に行ったところ、まだ売られていた。「この薬は胎児に副作用があることをご存じですか?」と聞いたところ、店員は店の奥に行き、戻ってきて「そういう副作用があるそうです」と答えた。店の薬剤師はおそらく情報を知っていたが、薬を店舗から撤去していなかった。製薬会社による回収は不十分で、63年以降も被害が続いた。

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