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安く速く非接触で 広がる空のイノベーション

(編集長コラム)

感染拡大への懸念からお盆の帰省を控え、自宅で過ごす夏休みを迎えようとしている方々も多いかもしれません。

コロナ危機に対応するために各国が模索する規制緩和の中で、期待が高まっている案件があります。ドローンによる物資の配達です。かねて米物流大手UPSや米ネット小売り大手アマゾン・ドット・コムは、荷物を安く速く確実に飛ばすための実験を繰り返してきました。

世界中で日々の買い物をリアルからネットに切り替える消費者が増えています。避けて通れないのが配送の効率化です。基幹の物流ネットワークから消費者の手元に届くまでの「ラストワンマイル」をいかに効率化するか。無人で届けることができるドローン配送はその切り札になると見られていますが、今は日本も米国もドローン飛行には「地上の操縦者」がいなければならないという厳しい規制がかけられています。

米運用会社アーク・インベストメントによると、例えば1ドル以下の費用で済むドローン配送の道が開けば、小売りに占めるネット販売のシェアは2019年の14%から2030年には6割になると予測。ドローン配送による収益は30年に1130億ドル(12兆円)になりうると分析しています。

人との接触を避けながら、荷物を運ぶことができるドローンの利点に着目する動きは広がっています。新型コロナウイルスの治療に役立てるために、5月に実験的な試みが始まりました。

米南東部で病院を運営する医療法人のノバントヘルス(ノースカロライナ州)は、物資の輸送を手がける米カリフォルニア本拠のスタートアップ、ジップラインと組み、ドローンを使って医療物資を病院に運ぶプロジェクトについて、米連邦航空局(FAA)から承認を得ました。

約50キロの距離をドローンが運ぶことで輸送時間を縮め、必要な地点に物資を落とします。これで人との接触が避けられれば、感染の懸念も拭うことができます。ジップラインは11年の創業以来、アフリカのルワンダやガーナで医療品を輸送し、実績を積んできました。今後、世界の製薬会社がしのぎを削る新型コロナのワクチンの開発が成功すれば、患者の手元に届けるための貴重な輸送手段になる可能性を秘めています。

モノを運ぶだけにとどまらず、ドローンが可能にする「空からのデータ収集」がイノベーションを興すという期待も高まっています。4月、イスラエルのスタートアップ、エアロボティクスの産業用ドローンが、都市封鎖状態にあった米テキサス州の石油会社で職場に戻れない人々の代わりに検査などの実務を担いました。「非接触」で速く大量のデータを取得できれば、測量や設計、データ分析の効率化に役立つディスラプション(創造的破壊)が起きる可能性があります。

日本でも、人が入れない場所で活躍するドローン・テクノロジーを駆使する企業があります。13年設立、18年に上場した自律制御システム研究所です。同社の産業用ドローンは老朽化した下水道の点検から、災害で孤立した地域への食料や物資の輸送を担っています。

8月9日号の巻頭特集「インフラ10兆円市場始動~災害復旧・老朽化対策…最新テックに迫る」では、災害列島ニッポンで活躍する隠れたイノベーション企業を詳細に解説しています。第2特集フォーカスでは、アジアの株式市場の「強さ」と注目銘柄を点検しました。週末のひととき、ぜひお目通しください。(日経ヴェリタス編集長 塚本奈津美)

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