コロナ×EV×自動化…どうなる自動車業界、Q&A解説

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/8/17 2:00
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CBINSIGHTS
 新型コロナウイルスのまん延により消費者が外出を控えたことで、輸送機器産業へ甚大な影響が出ている。またコロナの前から自動車の動力源がエンジンから電動にじわり移行するなど、輸送機器を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。モビリティーの技術開発はどのような方向に進むのか。今回は一問一答形式で紹介する。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

新型コロナウイルスはモビリティー(移動体)のエコシステム(生態系)に大きな打撃を与えている。消費者はスクーターやライドシェア(相乗り)から駐車場、自動車用品までモビリティーに関する支出をことごとく抑え、公共交通機関の利用も控えている。

CBインサイツは先日開催したウェブセミナー(ウェビナー)「輸送の未来:新型コロナのモビリティーへの影響」に関連して、新型コロナのパンデミック(世界的な拡大)に伴うモビリティーの新たなトレンドや変化、注目すべき有望分野について調べた。

今回のリポートでは、ウェビナーで読者から寄せられた主な質問の一部に答える。

新型コロナ、モビリティーのエコシステムに衝撃

新型コロナ、モビリティーのエコシステムに衝撃

Q.電気自動車(EV)の需要が伸びているのは乗用車市場だけなのか、それとも大型車の貨物輸送にも広がるのか?

A.トラックやバスのような中大型車が電動化の焦点になるのは間違いない。中大型車が米国の自動車全体に占める割合はわずか10%だが、輸送部門の二酸化炭素(CO2)排出量では28%を占めることを考えると、中大型車の電動化は大きなインパクトをもたらす。

中大型車を購入しているのは政府や企業であるため、電動化を進めやすい。さらに、バスやトラックは大体決まった道を走行し、夜間に車庫で充電できることを考えると、乗用車よりもEVに適している。こうした性質から、1回の充電で走行できる航続距離への懸念も軽減できる。

電動化は大手自動車メーカーが最も重視している分野に

電動化は大手自動車メーカーが最も重視している分野に

Q.顧客に届ける「ラストワンマイル」の輸送や配達と比べて、中距離輸送はどんな状況にあるのか?

A.中距離の輸送や配送は物流各社に「ラストワンマイル」にはない多くのコスト削減の機会をもたらす。例えば、中距離車は主に同じルートを走行するため、自動化しやすい。一方、ラストワンマイルの配達ルートははるかに複雑なことが多い。しかも、企業は通常、配送センターと実店舗の両方を持つ。つまり、中距離の2つの場所で成り立っており、サプライチェーン(供給網)の両端をコントロールできる。

Q.ティア1サプライヤー(完成車メーカーに直接納入する1次部品メーカー)が電動化に重点を置いているとすると、どんな高速充電やワイヤレス充電の技術の開発が進んでいるのか?

A.いくつかのスタートアップが高速充電や電力系統への負担を最小化する手段を探っている。

英石油メジャーBP傘下のBPベンチャーズなどが出資する米フリーワイヤ・テクノロジーズ(FreeWire Technologies)は、普通の壁のコンセントから充電し、1日に複数のEVに給電できる移動可能なEV充電ステーションを開発した。同社によると、この充電器は設置コストが従来よりも4割安く、低い電圧でオフピーク時に充電することで電力系統への負担を減らせる。

一方、同じくBPベンチャーズが出資するイスラエルのストアドット(StoreDot)は、5分で満充電できる高速充電器を開発している。

無線充電では、米半導体大手クアルコム、米インテル、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の出資を受ける米ワイトリシティ(WiTricity)が、EVを無線充電する磁気共鳴技術を開発している。同社の方式では複数のデバイス(装置)を同時に充電できるほか、距離があったり、木材やプラスチック、御影石、ガラスなどの素材を通したりする場合にも充電できる。

さらに、米ニューヨークに拠点を置くヒーボパワー(HEVO Power)は、EVの自動充電システムを開発している。同社の充電ステーションは、EVがレシーバーの上に停車すると、自動で無線送電する。複数の大手自動車メーカーや電力会社がヒーボの充電方式を採用している。

人工知能(AI)を使って新たなEV充電システムの開発を加速している企業もある。トヨタ自動車は米スタンフォード大学と米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、様々な充電方式のバッテリーへの影響を予測するAIソフトウエアを開発した。これを使うと、テスト期間を2年弱から16日に短縮できる。

Q.ウイルス感染の脅威が収まっても、自転車や電動スクーターの利用増加の流れは続くのか?

A.新型コロナのワクチンや治療薬が開発され、場を共有することによる感染への懸念が収まれば、消費者の行動は徐々に元に戻る可能性がある。ウイルスをほぼ封じ込めた中国などでは既にこうした動きがみられる。

とはいえ、モビリティーに関する行動のより恒常的な変化は脱都市化やリモートワークの常態化から生じる可能性がある。こうしたトレンドから郊外や地方で自家用車の需要が高まり、公共交通機関やオンデマンドのモビリティーの利用が減ることになりそうだ。

調査では、自家用車が安心感をもたらすことが示された

調査では、自家用車が安心感をもたらすことが示された

Q.新型コロナの影響で自動運転車の実用化や普及は遅れるのか?

A.自動運転車の開発はコロナ前から予想よりも遅れていた。パンデミックの影響で開発各社は資金面の制約に直面しており、開発は一段と遅れる可能性が高い。

テクノロジー企業は資金力があるため、今後2~3年でこの分野の進歩を大幅に進めるだろう。

Q.自動運転車では、ティア1サプライヤーはシステムレベルの開発から部品/サブシステムの開発に移るのか?

A.ティア1サプライヤーは総じて、予想されていたほど自動運転システム全体の開発には関わらないようだ。

自動運転システムでは、完成車メーカー各社はティア1ではなく、米アルファベット傘下のウェイモや米ゼネラル・モーターズ(GM)系のクルーズ、米ズークス(Zoox)、米アルゴAIなど自動運転技術の開発に特化した企業と直接提携するようになっている。

米自動車部品大手アプティブはなお自動運転システムの開発に取り組んでいるようだが、独ボッシュやデンソーなど他のサプライヤーは今や運転支援システムの開発の方に力を入れている。

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