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ライブを止めるな 「配信」「リアル」で揺れる夏

(IN FOCUS)

好調だった音楽ライブの危機が続いている。感染対策をとって営業を再開しても、観客数の制限で売り上げは伸びない。出口の見えない苦境の中、新たな収益の柱としてオンライン配信に活路を見いだそうと、試行錯誤のステージづくりが行われている。

野外フェス

7月31日、東京都あきる野市のキャンプ場に、軽やかなギターとドラムの音色が響いた。コロナ下の野外フェスの形を探ろうと開かれた「#ライブフォレストフェス」。客は最大200人に絞り、間隔を空けて椅子を並べた。日が暮れて盛り上がると、席の前や後方の指定エリアで、距離を保ちながら踊る人の姿も。

主催したアースガーデンは、5月から無観客での配信や関係者限定のライブを重ね、感染対策とフェスの両立を検討してきた。鈴木幸一代表は「新しい文化を生み出す高揚感がある」と前向きだ。

音楽ライブ市場は先が見通せない。ぴあ総研によると、2019年の市場規模は速報値で過去最高の4240億円に達したが、20年は3分の1を下回ると見込む。

老舗ジャズクラブ

小曽根真さんが率いるビッグバンドの公演が行われたブルーノート東京。プレーヤーと客席には約3メートルの間隔をあけた(8月3日、東京都港区)

ジャズクラブのブルーノート東京(東京・港)は、6月に営業を再開。客席は3割程度に減らす一方で、ライブ配信にも取り組む。1回に平均して700人ほどが視聴しているというが、小林栄取締役は「まだ物足りない」。新たな取り組みが必要と「アイデアをひねり出している」。8月からはライブを視聴しながらディナーを楽しめるよう宅配サービスも始めた。

春以降、ライブ配信は急速に注目を集めている。ソニー・ミュージックソリューションズやチケット販売のぴあ、イープラスが独自のサービスを開始し、競争が激化しつつある。

オンラインフェス

無観客のなか熱唱するスチャダラパーのBOSEさんを複数台のカメラが追う(8月1日)

8月1日に開かれたオンラインの仮想フェス「ブロック・フェスティバル」は、ライブ配信アプリの「LINE LIVE」で配信された。10組のアーティストがカメラの前で熱演、映像づくりにも力を入れた。夕日が照らす海沿いのカフェに、歌手のCharaさんの甘い歌声が響き、花火が打ち上がるシーンも。

ブロック・フェスでは、視聴者のコメントやアーティストを支援する応援ポイント(投げ銭)が表示される=一部画像処理しています

視聴は無料だが応援アイテムをアプリ上で購入する「投げ銭」で、アーティストを支援する仕組みだ。4千円のTシャツのスタンプを購入すると実物が自宅に届く。この日は約54万人が視聴し約280万円の支援が集まったが、収益化にはまだ課題が残る。

ライブハウス

「著名なミュージシャンじゃないとオンライン配信は苦しい」。都内のある小規模なライブハウスの店主は6月、「投げ銭」形式の配信を試みたが収益はほぼゼロだった。ネット上で多くの人の目に留まればメジャーになるチャンスがあるが、まだ無名のミュージシャンにとってオンライン課金すること自体がハードルが高いうえ、配信機材の整備はライブハウスにも負担が大きい。

飛沫防止のため、透明のビニール傘で客席と演奏者を分けて演奏する中村皓さん(左)たち若手ミュージシャン(東京・下北沢の「ミュージックバーrpm」)

ドラマーの中村皓さんが7月、東京・下北沢の「ミュージックバーrpm」でジャムセッションを企画したところ、約10名のミュージシャンが集まった。飛沫防止のためビニール傘で仕切るなど感染対策をしたステージで、1曲ごとにミュージシャンが交代しながら熱演が繰り広げられた。「耳の向きを変えるだけで、聞こえてくる音圧が変化するのが生演奏の魅力。若手ミュージシャンの修業の場でもあり、音楽の仕事を紹介してもらうこともある」。中村さんはリアルの場の大切さを強調する。

自宅から配信

オンライン配信アプリを利用して、自宅からメンバーと一緒にセッションする黒沢ダイスケさん(7月25日、横浜市保土ケ谷区)

楽器メーカーのヤマハはリモートで合奏を可能にするシステムを6月末から正式に公開した。「タイミングはどう?」「動画が止まってるよ。設定は大丈夫?」。作編曲家の黒沢ダイスケさんはカメラに向かってメンバーに話しかけた。演奏アプリ「シンクルーム」は音の遅延が限りなく少なく、ストレスを感じず演奏を楽しめる。

ライブは動画投稿サイト「ユーチューブ」を使って配信。ファンと交流する場として試みている。黒沢さんは「視聴者からのコメントを読みながら、双方向性の新しいライブができる」と話す。無料で利用できるのも若手ミュージシャンにはありがたい。

コロナ禍の困難に立ち向かう音楽ライブ。観客やファンと音楽体験をどう共有するか、持続可能な活動スタイルと新しい楽しみ方を生み出す試みが続いている。

(写真・文 中尾悠希、小林健)

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