貴族邸宅での試演 再現(音楽評)
テレマン協会 定期演奏会

関西タイムライン
2020/8/7 2:00
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感染防止のための小編成を逆手にとった演奏会となった=日本テレマン協会提供

感染防止のための小編成を逆手にとった演奏会となった=日本テレマン協会提供

大阪市中央公会堂で、日本テレマン協会の第270回定期演奏会を聴いた(7月16日)。プログラムは、サリエリのオペラ《オラース兄弟》の序曲と、ベートーヴェンの交響曲第1番と第2番。これを初演の時のスタイル、それも、貴族の邸宅での試演を再現した。

当時の記録が十分ではないので正確な意味での再現ではないが、ともかく、弦楽器は第一、第二ヴァイオリン各2人、ヴィオラ2人、チェロとコントラバス1人というたった8人であるのに対し、管楽器は2人ずつという編成で演奏された。つまり人数の割合が「いつも」と逆なのである。指揮者を中央に弦楽器奏者が半円型に並び、その後ろを管楽器が囲む。チェロとティンパニ以外は立って演奏。奏者同士の間隔は自然に開いている。

なぜ、今までこの形で演奏されたことがなかったのだろう。200年ほど前に初演してみた時の様子。初めて楽譜が音になった時の感動。それが、こんなに豊かな、管楽器に包まれるような響きだったとは。

各パート2人ずつということが、面白くさせた要因の一つだろう。パート内で2人が「合わせる」ことと、その2人のパート同士が「合わせる」ことの二重性が生まれたのだ。一糸乱れぬ統一感はどこにも無い。指揮者の統率も無い。奏者各々が独立して語り合う。指揮者もひとりの奏者だ。全員の間にあるゆるやかな「間」が、空間的にも時間的にも、個々を自由にする。全てが動く。

不思議なことに、ベートーヴェンにバロックの香りが満ちる。歴史をエポックで区切って理解する癖が、時代を断絶させてしまっていたことに気づく。本来音楽は、脈々と息をしてつながっていたのである。

(関西学院大学教授 小石 かつら)

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