広島「原爆の日」 松井市長の平和宣言要旨

松井一実市長の平和宣言の要旨は次の通り。
1945年8月6日、広島は原子爆弾により破壊し尽くされ、「75年間は草木も生えぬ」と言われました。しかし、復興を遂げ、平和を象徴する都市になっています。
今、私たちは新型コロナウイルスという新たな脅威に立ち向かっていますが、悲惨な過去の経験を反面教師にすることで乗り越えられるのではないでしょうか。
およそ100年前に流行したスペイン風邪は、第1次世界大戦で敵対する国家間での「連帯」がかなわず、数千万人の犠牲者を出しました。その後、国家主義の台頭もあり、第2次世界大戦、原爆投下へとつながりました。

苦い経験を繰り返してはなりません。私たちは自国第一主義によることなく「連帯」して脅威に立ち向かわなければなりません。
原爆投下で惨状を体験し「自分のこと、自国のことばかり考えるから争いになるのです」という当時13歳だった男性の訴え。昨年11月、被爆地を訪れ「思い出し、共に歩み、守る。この三つは倫理的命令です」と発信されたローマ教皇の力強いメッセージ。
国連難民高等弁務官として、難民対策に情熱を注がれた緒方貞子氏の「自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」という言葉。これらは、人類の脅威に「連帯」して立ち向かうべきであることを示唆しています。
これからの広島は、世界中の人々が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現へ「連帯」することを市民社会の総意にしていく責務があると考えます。
50年前に制定された核拡散防止条約(NPT)と、3年前に成立した核兵器禁止条約は、共に核廃絶に不可欠にもかかわらず、その動向が不透明となっています。
日本政府には、核保有国と非保有国の橋渡し役を果たすためにも、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを誠実に受け止めて条約の締約国になり、唯一の戦争被爆国として、世界中の人々がヒロシマの心に共感し「連帯」するよう訴えていただきたい。また、放射線により苦しむ人々に寄り添い、支援策を充実するとともに「黒い雨降雨地域」拡大に向けた政治判断を強く求めます。
原爆犠牲者のみ霊に心から哀悼の誠をささげ、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向け、被爆地長崎、思いを同じくする世界の人々と共に力を尽くすことを誓います。〔共同〕