三井E&S、船舶建造からの撤退を検討

2020/8/5 22:07
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国内造船の再編が加速してきた。三井E&Sホールディングス(HD)は5日、中期経営計画にあわせて造船大手ツネイシホールディングス(HD)との資本提携を発表し、自前建造からの撤退を検討することも明らかにした。中韓の造船大手との競争は激しさを増し、海外造船所の活用などで競争力を磨いてきた専業メーカーが重工系との提携で主導権を握る事例が相次いでいる。

三井E&Sは商船と艦艇の両部門で提携の道を探る

「常石造船と協業して、グローバルで中小型のばら積み船市場をけん引する」。三井E&SHDの岡良一社長はツネイシと資本提携の協議を始める狙いについて、こう話した。完全子会社の三井E&S造船がツネイシ傘下の常石造船の出資を受け入れる。三井E&Sは過半出資を維持する。年内の基本合意を目指し、21年10月にも株式の譲渡を終える見通しだ。

あわせて玉野艦船工場(岡山県玉野市)での商船建造からの撤退を検討することも明らかにした。岡社長は「(造船事業は)設計が中心となる」と話しており、今後は協業相手による海外での建造が主体になりそうだ。

ツネイシは国内造船4位、三井E&Sは8位にあたる。両社の商船建造量を合わせると川崎重工業を抜き、首位の今治造船や2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)に次ぐ3位連合となる。三井E&Sは千葉工場での商船建造からの撤退も決めている。「日本でもう船は造れない」(三井関係者)との判断だ。

広島に本社を置くツネイシは瀬戸内海の造船所以外に中国やフィリピンでも造船所を運営し、国内造船では海外進出の先駆者というべき存在だ。病院や学校と組んで地域を支援して雇用を安定させ、ばら積み船などを効率的に建造している。

三井E&Sはインドネシアでの発電所工事での大幅な損失計上で業績が悪化し、資産売却や1000人規模の削減を進めてきた。造船事業も20年度まで6期連続の営業赤字を見込む。5日に発表した2020年4~6月期の連結売上高は前年同期比0.4%増の1607億円。最終損益は85億円の赤字(前年同期は24億円の黒字)だった。

ツネイシと三井は18年に商船の設計開発や製造拠点の活用などを念頭に業務提携したが、さらに一歩踏み込む。三井の技術力と常石のコスト競争力を融合し、受注拡大につなげる構えだ。

決算とあわせて発表した中期経営計画では23年3月期に売上高7700億円、連結経常利益率4%を目指す。三井が強い船舶エンジンなどの機械部門と海洋開発の2部門を中核に据える。

6月中旬には艦艇部門で国内防衛最大手の三菱重工に艦艇事業を売却する協議を始めた。三井物産造船部としてスタートした祖業は、商船と艦艇で別々の道を歩む。

競合する世界の造船大手は再編で先行する。19年には中国の国有大手2社が統合し、中国船舶集団(CSSC)が誕生した。韓国でも現代重工業と大宇造船海洋が統合作業を進めている。

日本では2000年前後には三菱重工などの総合重工系企業が建造量の6割を占めていた。その後は今治造船や常石造船などの専業系が勢いを増して逆転し、19年には専業系が6割を握った。

総合重工系のジャパンマリンユナイテッドも今秋には国内最大手で専業の今治造船の出資を3割受け入れる。三菱重工は創業の地である長崎造船所の香焼工場(長崎市)を大島造船所に売却する方針。造船は日本の重工産業の源流となってきた産業だが、国際競争にさらされ、業界構造が抜本的に変わりつつある。

(西岡杏)

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