省エネの力、日本株上昇の原動力(石金淳)
三菱UFJ国際投信チーフファンドマネジャー

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2020/8/7 2:00
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日本企業の収益力を中長期的な視点で見ると、近年は目立って改善しています。法人企業統計によると、売上高経常利益率(金融業・保険業を除く全業種)は1980年代から90年代には2%前後、2000年代でも2~3%台でしたが、13年度には4%を超えました。16~18年度は5%を上回り、特に製造業だけをみると6~7%に達していました。四半期ごとのデータから推察すると、19年度も5%を超えたもようです。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、足元では大部分の企業の収益悪化が不可避となっています。しかし、それは一時的で、日本企業の収益力は中長期的に着実な向上を実現すると考えています。

根本的な要因のひとつは、高度な技術に裏打ちされ、かつ競合する製品がほかにないことから生じる日本企業の非価格競争力が世界に浸透してきたことです。しかし、それだけではありません。日本企業の省エネルギー(以下、省エネ)への努力がコスト削減を通じて実を結びつつあることも忘れてはならないでしょう。

国際エネルギー機関(IEA)のデータをもとに、2018年時点のエネルギー消費原単位(付加価値1単位当たりの最終エネルギー消費量)を算出すると、日本が世界トップクラスのエネルギー効率を実現していることがわかります。

名目国内総生産(GDP)を100万ドル産出するのに必要なエネルギー量を石油に換算した具体的な数値で表現すると、日本は68.98トンと世界平均(174.48トン)の4割、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(91.70トン)の4分の3にすぎません。

ちなみに国・地域別でみると、エネルギー消費量が多いのはロシア(435.71トン)や中国(301.45トン)です。米国も124.86トンとOECD平均を大きく上回っています。欧州は比較的優秀ですが、欧州連合(EU)が100.90トン、ドイツが75.65トンと、日本には及びません。

日本企業の省エネ努力はすでに、1973年10月に勃発した第4次中東戦争を契機とした第1次オイルショックの直後から始まっていました。それは石油消費量からも明らかです。1973年(日本は年度)から2018年にかけてOECDの平均が2割強増加したのに対し、日本は約4割減っています。日本の石油消費量は1973年度がピークで、その後にこれを上回ったことは一度もありません。

製造業のエネルギー原単位をみる限りでは、1990年度から2010年度ごろにかけてエネルギー効率の改善が停滞し、「日本の省エネは限界に達した」との見方もありました。しかし、製造業のエネルギー効率はその後に再び改善基調を取り戻し、18年度には製造業のエネルギー原単位が過去最低を更新しました。

10年から18年の石油消費量の増減をみても、世界平均は約13%、OECDも約2%増加したのに対し、日本は約17%減少しました。日本企業が省エネに取り組み、その効果が再度高まったことの表れといえるでしょう。

経済産業省は「長期エネルギー需給見通し」で、年率1.7%の実質GDP成長を前提に、30年までに最終エネルギー需要を原油換算で5030キロリットル程度削減するとしています。東日本大震災以降に原子力発電所が相次いで停止し、エネルギー供給力が低下していることなどを念頭に置いています。

資源エネルギー庁によれば、これを実現するためにはエネルギー効率(ここでは最終エネルギー消費量を実質GDPで割った値)を12年度に比べ35%程度改善する必要があります。こうした国策などもあり、日本企業が省エネによるコスト削減を一段と進めるのは間違いありません。

このように、日本企業は技術力向上に伴う非価格競争力を強化するとともに、一時は限界説もささやかれた省エネにも再びまい進しつつあり、今後は収益力を一段と高めることが予想されます。それは、中長期的な日本株の上昇トレンドを形成する基盤になると考えています。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。

石金淳(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJ国際投信)転籍。16年12月より現職。

[日経ヴェリタス2020年8月9日付]

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