タイ産ココナツ、不買広がる 「猿使い収穫」欧米で批判

アジアBiz
2020/8/5 18:00
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ココナツ収穫の訓練をするサル(7月、タイ南部スラタニ県)=ロイター

ココナツ収穫の訓練をするサル(7月、タイ南部スラタニ県)=ロイター

タイのココナツ製品が7月、欧米の大手スーパーの店頭から姿を消した。猿を強制的に収穫作業に従事させていると動物愛護団体が糾弾したためだ。矛先を向けられた食品メーカーは「うちは猿を使っていない」と反論している。真相はいまだ不透明な中で、不買の輪はなお広がっている。

「新型コロナウイルスで輸出が厳しいのに、こんな困難に直面するなんて」。アンポーン食品加工のクリアンサック社長は嘆く。同社はココナツミルクやオイルを「チャオコー」ブランドで輸出しているが、提携農場で猿に収穫させているとして、米動物愛護団体「PETA(動物の倫理的扱いを求める会)」から名指しで批判を受けたのだ。

8つの農場を調べたというPETAは7月、首輪をした猿がココナツを収穫する動画を公開。「まるで収穫マシン」と非難し不買を訴え、英BBCでも動画が報じられた。猿を労働力として使わない覚書を農場と結ぶアンポーン食品にとっては寝耳に水だった。

欧米の小売りは素早く反応した。英国の大手スーパー、モリソンズやセインズベリーズは店頭から商品を撤去。米ウォルマート傘下のアズダや米ドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスなども取り扱いをやめた。PETAによると、累計2万5千店以上が販売を中止した。

タイでは困惑が広がる。猿による収穫はタイで100年以上続く伝統だが、現在は鎌を使った人間の方が手早く収穫でき、猿がどこまで関わっているか疑問視する見方が多い。ジュリン商業相は観光客向けに猿を使う農場が残っていると認めた上で「産業規模での猿による収穫はもはやタイに存在しない」と強調する。

少数政党クラー党のアタウィット幹事長は「互いの文化を尊重すべきだ」と批判。インターネットでも「動物実験用に猿の輸入を増やす英国に言われたくない」と反発の声があがる。

タイはインドネシアに次ぐ世界2位のココナツ輸出国だ。ココナツミルクの輸出額は年間123億バーツ(約420億円)で、うち18%が欧州向けとされる。誤解を解こうと、7月下旬にタイ食品加工業者協会が各国の外交官を招き、収穫現場を公開。オランダなど4カ国が参加したが、不買運動の収束には至っていない。

環境保全や動物愛護など社会的な責任を求める声が高まり、欧米企業は自ら真相を究明する間もなく商品の撤去に動いた面もある。クリアンサック社長は「虐待は個別に対処すべきで国や産業全体を攻撃するのは間違いだ」と訴える。(バンコク=岸本まりみ)

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