フォードCEOが退任へ 6年で3度目、創業家に焦り

2020/8/5 12:34
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新CEOに就くファーリー氏はトヨタからフォードに移った=ロイター

新CEOに就くファーリー氏はトヨタからフォードに移った=ロイター

【ニューヨーク=中山修志】米フォード・モーターは4日、ジム・ハケット最高経営責任者(CEO、65)が10月に退任すると発表した。就任からわずか3年での退任は実質的な引責とみられる。6年間で3度目となるトップ交代には、長引く業績不振への創業家ビル・フォード会長(63)の焦りが透ける。

ハケット氏の後任にはトヨタ自動車出身のジム・ファーリー最高執行責任者(COO、58)が就く。

ハケット氏はオフィス家具メーカーのCEOとして経営を立て直した経歴を買われ、17年5月にフォードのCEOに就いた。遅れていた電気自動車(EV)や自動運転などの技術開発に取り組み、独フォルクスワーゲン(VW)との包括提携にも踏み切った。

だが、主力車の不具合などで新型車の開発が難航。欧米や中国で新車投入が遅れ、直近の世界シェアは5.9%と就任前から1.5ポイント低下した。19年には「リストラに手間取り、収益改善が遅れている」として米格付け会社が投機的等級に格下げ。アナリストから「意思決定が遅い」と指摘されたハケット氏が「慎重なだけだ」と反論する場面もあった。

フォードと取引する部品メーカーの幹部は「2月ごろからハケット氏の退任説が出ていた」と話す。19年10~12月に大幅な最終赤字となり、株価が9年ぶりの安値まで下落。20年3月にファーリー氏がCOOに昇格し、CEO候補と噂された。新型コロナウイルス対策でもファーリー氏が指揮を取るケースが増えていた。

09年の金融危機で経営破綻を免れたフォードは、破綻した米ゼネラル・モーターズ(GM)、旧クライスラーに比べて結果的に事業リストラが遅れた。14年に就任した先代のマーク・フィールズCEOは高コストの米国依存を見直すためメキシコへの生産移管を試みたが、トランプ米大統領の批判を浴びて工場建設を撤回。株価下落で創業家の信頼も失い、3年足らずで退任に追い込まれた。

退任するハケットCEO(左)と創業家のフォード会長(2018年のデトロイトモーターショー)=ロイター

退任するハケットCEO(左)と創業家のフォード会長(2018年のデトロイトモーターショー)=ロイター

創業家のフォード会長はトランプ氏と親交が深く、米国内のリストラに慎重だ。フォード家は同社の議決権の4割を握り、人事にも大きな影響力をもつ。フィールズ氏を継いだハケット氏も米国での抜本的なリストラに踏み込めないまま3年でトップを降りる。

ライバルのGMはこの間にメアリー・バーラCEOの下で不採算の欧州やインド市場から撤退し、米国内の3工場の閉鎖を含む大規模リストラを推し進めた。バーラ氏が14年に就任して以降、ファーリー氏はフォードの4人目のCEOとなる。

ファーリー氏は1990年にトヨタ自動車の米国法人に入社し、若者向けブランド「サイオン」の立ち上げや高級車ブランド「レクサス」の拡大で実績を上げた。トヨタ社内で「ライジング・スター(希望の星)」と呼ばれ嘱望されたが、07年にフォードに引き抜かれた。

フォードではマーケティング統括や欧州事業トップを歴任し、フォード会長の信頼も厚いとされる。同会長は4日の声明で「ジムは決意と洞察力をもってフォードの変革を率いるリーダーに成長した」とファーリー氏を持ち上げた。米国事業や業界再編などの重要事項には引き続き創業家の意向が働く。経営に縛りがかかったなかで早期に結果を示すことができるか。ファーリー氏に与えられた時間は長くない。

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