開かない「夢の国」 米ディズニー、19年ぶり赤字

サービス・食品
北米
2020/8/5 11:28
保存
共有
印刷
その他

テーマパークの休園により、ディズニーの4~6月期は47億ドルの最終赤字となった(8月、カリフォルニア州のディズニーランド)

テーマパークの休園により、ディズニーの4~6月期は47億ドルの最終赤字となった(8月、カリフォルニア州のディズニーランド)

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ウォルト・ディズニーが約19年ぶりの最終赤字に転落した。新型コロナウイルスの影響で、大作映画の公開はすべて先送り。稼ぎ頭だったテーマパークの再開もままならない。キャラクターを中心に、リアルとデジタルの両面からファンを育てる「成長の方程式」はコロナで狂った。娯楽の老舗は逆境にどう向き合うか。

8月初めの週末、米カリフォルニア州にある「ディズニーランド」の扉は閉じたままだった。映画「スター・ウォーズ」を題材にしたアトラクションの開業に沸き、多くの家族連れでにぎわっていた1年前から様変わりだ。柵越しに見えるミッキーマウスのアートだけが相変わらず笑顔を振りまいている。

ディズニーランドは当初、7月17日の再開をめざしていた。創業者のウォルト・ディズニーがこの地にテーマパークを開いて65年目の記念日だからだ。だが再開を前に周辺地域でコロナ感染者が増加し、計画は撤回を余儀なくされた。いまも再開時期のめどは立っていない。

同施設をはじめ、世界のテーマパークの休園はディズニーの業績を傷めた。同社が4日に発表した2020年4~6月期の決算は、最終損益が47億ドル(約5000億円)の赤字。最終赤字はポータルサイト事業から撤退した01年1~3月期以来、およそ19年ぶりだ。劇場閉鎖に伴う映画の公開延期も響き、売上高は前年同期比42%減の117億ドルに落ち込んだ。

米フロリダ州のディズニーワールドなど、7月に入って再開にこぎつけた施設もある。ただ来場者に検温やマスクの着用を求め、コロナ下で薄氷を踏むような操業が続く。ボブ・チャペック最高経営責任者(CEO)は「壊滅的な状況で、従来と異なるアプローチを模索している」と言う。

チャペック氏が4日に明かしたのが、再三延期してきた映画「ムーラン」を9月4日から動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」で見られるようにする計画だ。2億ドルもの製作費を投じた大作ゆえ配信への移行は難しいとみられていたが、通常の月額料金とは別に30ドルを払ってもらう仕組みを整える。

テーマパークがにぎわいを取り戻すまで、消費者をつなぎ止められるかが課題だ(2019年8月、カリフォルニア州のディズニーランド)

テーマパークがにぎわいを取り戻すまで、消費者をつなぎ止められるかが課題だ(2019年8月、カリフォルニア州のディズニーランド)

ディズニープラスの会員数は6月末で5750万人となり、3カ月前と比べて7割増えた。チャペック氏によれば、8月4日までに「24年の目標」としていた6000万人も超えた。コロナ下でも途切れていない消費者との接点をたどり、ディズニーのキャラクターの世界につなぎとめようと動く。

もっとも動画配信サービスは先行投資の段階にあり、部門売上高39億ドルに対し、営業損益は7億ドルの赤字だ。会員が大幅に伸びてもテーマパークや映画の収益の落ち込みを補うには至らず、コロナは長年かけて築いたリアルな価値の大きさを改めて浮き彫りにした。230億ドルの手元資金があるためすぐに経営危機には至らないものの、配信だけでは不十分。デジタルとリアルの間を消費者が行き来してこそ復活は可能になる。

ディズニーの部門別売上高

ディズニーの部門別売上高

休園が続くカリフォルニア州のディズニーランド。実は、閉まった扉の外側には何組ものカップルや家族連れが訪れていた。柵越しにミッキーのアートと写真を撮るためだ。州内から訪れた夫婦は「寂しいけれど、これもディズニーの思い出だから」と言う。リアルな場が回復するまで、デジタルを駆使して消費者を引き付け続けられるか。他の多くの企業にも通じる課題だ。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]