トランプ氏、TikTok排除へ強権 売却不成立なら禁止

2020/8/4 19:30
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は中国企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し、動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」の米国事業を9月15日までに売却するよう求めた。交渉が不成立なら利用を禁止するとも表明した。売却益の一部を国庫に納めることも要求し、中国勢の排除へ強権を乱発している。

ティックトックを巡っては米マイクロソフトが2日、買収交渉に乗り出していると表明した。トランプ氏は3日、記者団に「マイクロソフトが買収しても構わない。9月15日までにマイクロソフトかほかの米企業への売却が決まらなければ、ティックトックの利用は禁止する」と主張した。

同氏は「交渉は米連邦政府が後押ししており、利益のかなりの部分を国庫に納める必要がある。ティックトックは米国で成長した。米国は『テナント料』をもらう権利がある」とも主張した。

実際、バイトダンスのティックトック事業は米国で急成長した。17年に米動画サービス「ミュージカリー」を買収して米国市場に参入したが、当時の取得額は約10億ドル(約1060億円)とされる。それが今回の売却交渉では500億ドル規模に膨らんだとされ、中国側に巨額の資金が渡ることになる。トランプ氏は売却益の「国庫回収」の手段に言及しなかったが、米大統領には「国際緊急経済権限法」などに基づいて、海外勢の資産を没収する権限がある。

トランプ氏がティックトックの強制売却を求めるのは、米大統領が安全保障を理由に海外勢に米子会社の売却や事業の停止を求める権限を持つためだ。米財務省などが管轄する対米外国投資委員会(CFIUS)はバイトダンスによるミュージカリーの買収案件を調査した。CFIUS議長のムニューシン財務長官は、トランプ氏に「1億人の利用者の個人情報が中国に流出する懸念がある」と米事業の切り離しを既に勧告したという。

バイトダンスは成長市場の米国から撤退せざるを得なくなった。同社は中国の「インターネット安全法」で当局へあらゆる協力が求められ、「ティックトックの米事業も北京からデータベースにアクセスできる以上、常に個人情報が抜き取られるリスクがある」(米財務省関係者)ためだ。

こうした米側の指摘はインターネット安全法が適用される中国の全企業に当てはまる可能性がある。トランプ政権はCFIUSの権限を2月に強め、外国企業の投資によって「米国民の個人情報に、外国政府か外国人がアクセスできるかどうか」も審査項目に加えた。

CFIUSは重要技術や知的財産の流出リスクを注視してきたが、個人情報も「安保上の大きなリスクだ」と警戒する。

米国でも6500万人が利用するティックトックが排除されれば、中国勢は対米投資のリスクを警戒せざるを得ない。

トランプ氏は3月にも中国のIT企業、北京中長石基信息技術に対し、18年に買収した米国のホテル向け情報サービス「ステインタッチ」を売却するよう命じた。宿泊者の情報が中国当局に渡るリスクを警戒した。

中国のゲーム会社、北京崑崙万維科技は3月、CFIUSの命令で、16年に買収した米出会い系アプリ会社を投資会社に売却した。同性愛者用のサービスで、エイズウイルス(HIV)などにかかわる極めて重要な個人情報を蓄積していた。

「成人の米国人は中国に個人情報を盗み取られていると思った方がいい」。レイ米連邦捜査局(FBI)長官は7月初旬の講演で断言。2月には米司法省が中国人民解放軍のハッカー4人を起訴したが、その攻撃で1億5000万人の米国人の個人情報が流出した。ティックトックのような消費者サービスにも包囲網を広げるのは「中国の知的財産の窃取は、対政府、対企業に限らない」(レイ氏)ためだ。

中国のアリババ集団系の金融大手アント・フィナンシャルも米送金大手「マネーグラム」の買収に乗り出した際、CFIUSに阻止された。中国勢は米国市場への入り口を閉ざされ、バイトダンスのような先行組も生き残りが困難になった。

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