TikTok騒動、マイクロソフトに好機

2020/8/4 17:00
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【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトが中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業の買収交渉を始めた。初期段階からトランプ米政権が後押しする異例のM&A(合併・買収)だ。米国だけで1億人近くが使うSNS(交流サイト)を手に入れる好機となる半面、政治との距離の近さはリスクもはらむ。

「大企業で、安全な企業、米国らしい企業が買うなら構わない」。トランプ大統領は3日、中国北京字節跳動科技(バイトダンス)の米子会社ティックトックについて米企業による事業買収を条件付きで認めると表明した。

ティックトックはポンペオ米国務長官が7月に「個人情報が中国共産党に渡りかねない」と指摘し、利用禁止の議論が浮上した。ただ若年層を中心に米国で1億人近いユーザーを抱え、11月の大統領選を前に大きな反発を招く可能性があった。

米企業への売却によって安全性を確保するという案に傾くなか、マイクロソフトに白羽の矢が立った。同社は6月末時点で1365億ドル(約14兆円)の手元資金を持ち、数兆円規模の買収費用を賄える。大規模なネットサービスの運営実績もある。

7月29日に開かれた米議会の公聴会で、アップルなど米IT大手4社のトップが議員から厳しく追及を受けるなか、マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は呼ばれなかった。他のIT大手と比べて反トラスト法(独占禁止法)に抵触するリスクが現時点では低い。

ナデラ氏が就任して以降のマイクロソフトはビジネスSNSの米リンクトインやIT開発者支援の米ギットハブなど、企業向けサービスの買収に力を入れてきた。ティックトックの買収は一見戦略から外れるが「無視できないチャンスだ」(米国みずほ証券)との見方が広がる。

まずは価格だ。トランプ大統領はバイトダンスに45日以内の売却を迫っており、候補が限られるなかでマイクロソフトが有利な条件で買える可能性は高い。

ティックトックの米事業は投資が先行し、現状は赤字のもようだ。一方で利用者が増えており、広告収入で回収が見込める。サービスを支えるクラウド基盤もマイクロソフト製に切り替えられる可能性がある。「オフィス」など同社のサービスをあまり使わない若年層との接点になるほか、ゲーム事業との相乗効果を見込む声もある。

もっとも「トランプ大統領公認」の買収交渉は新たな課題をもたらす可能性がある。対中強硬派のナバロ大統領補佐官は「マイクロソフトの中国事業の売却を検討すべきだ」と指摘しており、中国政府からは米政権に近すぎる企業と見られかねない。買収交渉そのものに加えて、政治との間合いも重要になる。

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