線状降水帯の発生予測、進む研究 高精度化は道半ば

2020/8/3 18:58
保存
共有
印刷
その他

 豪雨の影響で水に漬かった熊本県人吉市の市街地(7月4日午後4時9分)=共同

豪雨の影響で水に漬かった熊本県人吉市の市街地(7月4日午後4時9分)=共同

帯状の積乱雲が局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」の発生を正確に予測しようと、茨城県つくば市の防災科学技術研究所(防災科研)などによる実証実験が九州で進んでいる。1カ月前の豪雨でも発生の可能性を察知していたが、予測精度が高くなく、詳しい発生時間や場所の特定には至らなかった。早期避難に生かせる高精度予測の実現に期待が集まる。

「線状降水帯発生の可能性があります」。豪雨前日の7月3日夕、熊本市の防災担当部署に防災科研から1通のメールが届いた。3日午後6時から4日午前6時の間に線状降水帯発生の恐れがあるとの内容だった。

線状降水帯は積乱雲が次々と発生して列をなし、数時間にわたって同じ場所を通過したり、停滞したりして大雨を降らせる。気象庁によると、2017年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨で大きな被害をもたらし、今回の豪雨でも7月3~8日に九州で9回発生した。詳しい予測が困難で、避難を促すタイミングの難しさが課題だった。

このため、防災科研は19年7月から福岡大や日本気象協会などと連携して早期予測に向けた実証実験を始めた。気象庁が開発した指標に基づき、参加する九州の9自治体に対し、12時間後に線状降水帯が発生する可能性をメールで知らせる仕組みだ。今回の豪雨では熊本、鹿児島両市に情報を提供した。

ただし現在の技術では、発生12時間前の時点で細かい発生範囲などの特定は困難といい、熊本市の担当者は「精度が高くないため、情報に基づいて特段の措置は取っていない」と話す。鹿児島市の担当者は「避難情報発令の意識付けに役立っている」と評価する一方で「市域が南北に長いため場所によって天候が異なることも多く、行政対応につなげにくい」と精度向上に期待を寄せた。

研究責任者を務める防災科研の清水慎吾主任研究員は「時間帯の絞り込みや空振りを減らすための改善を進めているが、全てが解決するわけではない」と話す。そこで研究グループが進めているのが、線状降水帯の兆候をつかむのに必要な大気中の水蒸気の観測情報を基に2時間先の発生を高精度で予測する実験だ。

1日2回観測する現在の体制では把握できないため、研究グループはリアルタイムで水蒸気量を把握できる「水蒸気ライダー」と呼ばれる最新設備を九州各地に設置し、ライダーは上空にレーザーを照射して大気中の詳しい水蒸気量を計測。このデータを基に線状降水帯の発生可能性が高い地域を発生2時間前に特定する計画だ。

実験に協力する気象庁気象研究所が6月に長崎県で稼働させたほか、福岡大も鹿児島県内での設置を予定している。地上デジタル放送の電波を利用した観測も始まるという。清水氏は「これほどの水蒸気観測網は珍しく、オールジャパンの研究体制だ。世界的に見ても非常に進んでいる」と強調する。

目に見えない水蒸気を遠隔地から正確に観測するのは難しい。23年3月までの実証実験では水蒸気の観測網を増やし、予測精度をどこまで上げられるかが課題だ。清水氏は「自治体のニーズに沿った情報提供の方法を気象庁にフィードバックするなどの社会実装を考えている。計画的な避難の実践につなげたい」と話している。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]