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マレーシア、連立政権に亀裂 ナジブ氏の有罪判決が波紋

マレーシアのナジブ元首相=AP

【シンガポール=中野貴司】マレーシア政府系ファンド「1MDB」を巡る巨額資金流用事件でナジブ元首相に有罪判決が出たことで、同国の連立政権に亀裂が生じている。ナジブ氏らは連立離脱をちらつかせてムヒディン首相を揺さぶっており、政治の混乱に拍車がかかっている。

ナジブ氏が所属し、連立政権の一角を占める統一マレー国民組織(UMNO)は3日までに、ムヒディン氏らが推進する政党連合構想に加わらず、全マレーシア・イスラム党(PAS)との共闘を優先すると発表した。連立政権から直ちには離脱せず引き続き支援するとしているものの、距離を置く姿勢を鮮明にした。

3月にUMNOやPASなどの協力を得て発足したムヒディン政権は、首相を決める下院(定数222)の過半数をわずかに上回る議席しか確保できていない。うちUMNOとPASの議席数は合計で57と、ムヒディン氏のマレーシア統一プリブミ党(PPBM)の議席数(31)より多い。仮に両党が連立から離脱すれば、政権は行き詰まる。UMNOの声明はムヒディン氏に圧力をかけ、連立政権内での主導権を確保する狙いだった。

背景にあるのは、7月28日にナジブ氏に下された有罪判決だ。クアラルンプール高等裁判所(一審)は1MDB事件に関して、ナジブ氏の権力乱用や背任、資金洗浄の罪を認定し、禁錮12年と約52億円の罰金を科した。ナジブ氏は当面下院議員を続けられるが、今後上級審で判決が覆らない限り、次の総選挙には立候補できない。

UMNOとPAS、PPBMの政党は共に多数派のマレー系を支持母体とする共通点がある。3党は解散・総選挙に備えて選挙区の調整を協議し始めていたが、早期の合意は難しくなった。ナジブ氏はムヒディン氏への圧力によって解散・総選挙の先送りを図りつつ、上級審での無罪判決に望みをつなぎ、政治的影響力を維持したい考えだ。

一方、ムヒディン氏は解散戦略の再考を迫られている。28日の有罪判決直後に司法の独立や法の支配を強調する声明を出し、政権の公正さを訴えていた。マレー系の有権者になお高い人気を保つナジブ氏の影響力をそぎ、解散権行使の自由度を確保する思惑があった。

ただ、UMNOとPASが候補者の一本化を進めれば、マレー系の票が両党に流れる恐れがある。コンサルティング会社ブリエンズ・アンド・パートナーズのナズフィフ・ユソフ氏は「UMNOとPASが次の総選挙で議席を増やせば、ムヒディン氏らを外して政権をつくる可能性もある。ムヒディン氏にとって解散時期の判断は難しくなっている」と分析する。

ムヒディン氏はUMNO内の改革派と連携しながら、ナジブ氏の圧力に対抗する考えだ。ナジブ氏の側近でUMNO現総裁のザヒド氏も1MDB以外の汚職事件で起訴されている。中堅・若手議員の中には汚職と結びついた旧世代からの世代交代を求める意見もあり、ナジブ氏への有罪判決を機にこうした声が内部で勢いを増す可能性がある。

ナジブ氏は首相時代の2015年、1MDB事件の真相解明を求めた当時のムヒディン副首相を更迭した過去がある。その両氏が3月に連立で組んだのは、過半数を確保する打算の側面が強かった。有罪判決は両氏の政治的立場の違いを改めて浮き彫りにした。

連立政権に亀裂が生じ、野党にとっては本来倒閣の好機だ。しかしアンワル元副首相を首相候補とする勢力と別の候補を模索するマハティール前首相との溝がここにきて一段と深まっており、勢力を結集できていない。

マハティール氏は1MDB事件を巡って、ナジブ氏と以前から対立しているほか、ムヒディン氏が首相に就任した後は同氏ともたもとを分かっている。マハティール氏を支持する議員は現時点で少数にとどまっており、復活のシナリオを描けていない。

マハティール氏に近いシャフィー・アプダル氏が州首相を務めていたサバ州は与党連合の切り崩しにあい、州議会の解散に追い込まれた。与野党ともに不安定な状況が、国政、地方政治の流動化を加速している。ムヒディン政権が解散に打って出られず、過半数ぎりぎりの状態での政権運営が続けば、政治の混乱が長引く恐れが高まる。

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