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ロシアがワクチン8月に承認へ 治験と並行、10月接種

(更新)

【モスクワ=小川知世】ロシアが新型コロナウイルスのワクチン開発を急いでいる。政府は8月に承認を終え、10月に大規模な予防接種を始める方針を示した。世界に先駆けて実用化を進め、国内外に「大国」を誇示する考えとみられる。スピード優先の開発に欧米からは安全性を疑問視する意見も出ている。

9月に量産開始

「2つのワクチンが最も有望だ」。保健分野を担当するゴリコワ副首相は7月29日、プーチン大統領とのテレビ会議で開発の成果を強調した。

同氏によると、モスクワの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所が国防省と開発中のワクチンを8月に承認し、9月に量産を始める。実現すれば世界初となる可能性がある。別の国立研究所で開発中のワクチンも9月に承認する見通しだ。

ワクチンは医療従事者などから接種を始める。ムラシコ保健相は1日、10月に無料で大規模な接種を始める考えをタス通信などに明かした。

開発に投資する政府系のロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁によると、承認予定のワクチンは風邪の原因となるウイルスに新型コロナウイルスの情報を組み込んで開発した。安全性が確認された既存のほかの病気に対するワクチンを基にし、2回の接種で長期の免疫を得られるという。

ドミトリエフ氏は年内に国内だけで3000万回分を量産できると説明した。「一部の国で否定的な報道が多いロシアに関する前向きなニュースだ」と自信をみせた。

いち早い開発にワクチンの安全性や有効性を疑う意見もある。ロシアの初のワクチンは3段階ある臨床試験(治験)のうち第2段階を終えた時点で承認した後で、第3段階の1600人への治験を並行して進める予定だ。現時点で詳しい臨床データは示されていない。

米CNNは欧米の規制当局が求める治験の全段階が完了していないなどとして「安全性を確認できない」と伝えた。ワクチン開発に詳しいロシアのエウゲーニー・チマコフ医師はワクチンの有望性を認めつつ「合併症を引き起こす可能性について、さらなる治験が必要だ」と指摘する。

開発を急ぐ背景にはコロナで悪化した経済への危機感がある。ロシアの感染者は約85万人で、1日5千人を超える増加が続く。感染対策で経済活動が制限された4~6月期の実質所得は前年同期比8%減に落ち込んだ。

プーチン氏の支持率は低迷し、極東ハバロフスクでは知事の逮捕に端を発した抗議デモが7月半ばから続く。感染拡大の第2波が起これば生活悪化で政権への不満が膨らみかねない。同氏は7月の会議で「制限措置の再開を防ぐため、あらゆる予防策を講じる必要がある」と強調した。

世界に成果誇示

米欧に先駆けた開発は新型コロナ対策の成果を国内外に示す格好の事例にもなる。ロシアはワクチンのアジアや中東などへの輸出にも意欲を示す。米国と中国の対立が激化するなか、ワクチン供与で国際協調を打ち出し、影響力の拡大を図る狙いもあるとみられる。

開発を巡る国際競争は激しくなっている。世界保健機関(WHO)によると、開発中のワクチンは7月31日時点で165種類にのぼり、うち26種類が治験を始めた。現在最終段階の「第3段階」に入ったワクチンは6種類ある。英オックスフォード大学と協力する英製薬大手アストラゼネカのワクチンは治験を経て、早ければ9月にも供給が始まる予定だ。

中国は国を挙げてワクチン開発を進め、実用化を急ぐ。製薬会社の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は第3段階の治験をブラジルで始めた。ロイター通信によれば、国有製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)もアラブ首長国連邦(UAE)で第3段階の治験を始めている。

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