地形から知る自然災害リスク 土地の成り立ちに目配り
20代からのマイホーム考(6)

20代からのマイホーム考
住まい
2020/8/10 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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最近の集中豪雨により河川が氾濫し、住宅などに大きな被害が及んでいます。洪水ハザードマップは浸水リスクの確認ができますが、災害リスクは水害だけではありません。住まい選びをする際に、その土地特有の自然災害リスクを事前に知っておくことは極めて重要だと思います。

■地形から見た災害リスク

土地にはさまざまな地形があります。周囲が侵食によって削られ高い土地となっている「台地・段丘」、同じような台地にはあるものの、周辺と比べてわずかに低い土地である「凹地・浅い谷」、洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積し、起伏が小さく、低くて平坦(へいたん)な「氾濫平野」。氾濫平野の中にあり、周囲よりわずかに低い土地となっている「後背低地・湿地」など、様々な地形に分類されます。

そして、それぞれの地形には、例えば「台地・段丘」では河川氾濫のリスクはほとんどないとされるものの、同じような高台にある「凹地・浅い谷」は大雨の際に一時的に雨水が集まりやすく、浸水のおそれがあったり、地盤が軟弱な場合があったりするなど、地形特有の災害リスクがあるのです。

■ワンクリックで地形分類と災害リスクがわかる

その土地の地形や自然災害リスクを簡単に調べることができるのが、国土地理院の「地理院地図」の地形分類(ベクトルタイル提供実験)です。このサイトでは、身の回りの土地の成り立ちと、その土地が本来持っている自然災害リスクについて、地図上でワンクリックすれば確認することができます。

「地理院地図」で検索し、地図を開きます。調べたいおおよその地域を表示したら、「地図を選択」をクリックします。そのメニューから「土地の成り立ち・土地利用」→「地形分類(ベクトルタイル提供実験)」とクリックしていけば、「地形分類(自然地形)」「地形分類(人工地形)」が選べます。ここでは前者を見てみましょう。

下の地図は東京の渋谷区南平台町、桜丘町界隈(かいわい)の地形分類です。渋谷駅周辺は北西から南東に向かって流れる渋谷川あたりが谷になっており、その東西は高台の台地になっています。渋谷川周辺の薄い緑色部分をクリックすると、地形分類は「氾濫平野」と示され、一般的な土地の成り立ちと自然災害リスクについての記載がポップアップで出現します。猿楽町あたりは「台地・段丘」で河川氾濫のリスクは少なく、地盤は良好で地震の揺れや液状化のリスクは少ないとされています。

国土地理院「地理院地図」を筆者が抜粋・加工(以下も同じ)

国土地理院「地理院地図」を筆者が抜粋・加工(以下も同じ)

渋谷駅から道玄坂を西に上り、旧山手通りを越えたあたり(地図上では青葉台(三)の上方)には、やや濃い緑に塗られた部分があります。ここは「凹地・浅い谷」となっています。この界隈は高台にはあるものの、周辺に比べ少々低くなっています。それゆえ、大雨の際には水が集まりやすくなっています。渋谷区洪水ハザードマップを調べると浸水リスクのあるエリアとなっていました。また、地盤が周囲より軟弱である場合があるとされていますので、建物が傾くリスクなどに注意が必要かもしれません。

次の地図は低地エリアとなる葛飾区の帝釈天界隈です。薄い緑色部分は氾濫平野ですが、その周辺には黄色く塗られた、周辺よりやや高い「自然堤防」がある場合があります。

自然堤防は河川の氾濫時に土砂が堆積したことによって周囲より少し高い土地になっていますので、洪水リスクはやや低く、昔から集落として人々が住んでいた場所であることが多いようです。一方で、帝釈天の西側にある水色に塗られた部分は「旧河道」で、「水はけが悪い。地盤が軟弱で、地震の際は揺れが大きくなりやすい」とあります。

■資産価値に影響する可能性も

ここで紹介した地形分類に記載された自然災害リスクは、個別の場所のリスクを示すものではないとされています。しかし、事前に知っておくに越したことはありません。

住まいを選ぶとき、駅から近い、都心へのアクセスがよいといった利便性も重要ですが、土地の成り立ちから考えられる自然災害リスクにも目を配る、あるいは、こうした自然災害リスクがあることを理解した上で暮らすということが、将来起こりうる豪雨や震災などを乗り越えるためにも、必要とされる時代となったのではないでしょうか。

田中歩(たなか・あゆみ)

1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
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