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スパート武器に頂点へ ケイリン日本代表・脇本雄太(上)

自転車トラック種目世界選手権の男子ケイリン決勝で2位に入った脇本雄太(中央)。右は優勝したオランダのラブレイセン(2月、ベルリン)=共同

自転車トラック短距離のケイリンは日本発祥でありながら、五輪で金メダルを獲得した日本選手はまだいない。スピードと駆け引きが魅力の花形レースで脇本雄太(31、日本競輪選手会)は今、世界の頂点に最も近い選手の一人だ。

2月の世界選手権(ベルリン)で銀メダルを獲得し、6月にはリオデジャネイロ大会に続く東京五輪出場に内定した。幸いにも拠点の伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)への新型コロナウイルスの影響は限定的。大きな期待を自覚するエースは「なぜ金を取れていないのか。プライドを持って練習している」と自らを追い込む日々を送る。

1周250メートルのトラックを6周。集団内で互いにけん制し、さあ勝負という後半にいち早く飛び出すロングスパートこそ、脇本の必勝パターンだ。

世界選手権の準決勝。6人中5番手で、残り2周にさしかかっても焦りはなかった。「今までは車間やスピードを考えていたけれど、勝手に体が動いた」。迷わずペダルを踏み込むと前の4人を置き去りにする。

日本代表短距離ヘッドコーチのブノワ・ベトゥが「乳酸への耐久力がある」と称賛する逃げは最後まで減速せず、大差でゴール。リオ五輪後に就任したこのフランス人コーチと強みを磨き上げた「理想のレース」で、鮮烈な印象を残した。

ただ、決勝には高い壁が立ちはだかった。同大会のスプリント種目も制したオランダのラブレイセン(23)。180センチ、83キロの脇本より一回り大きな自転車王国のスターはライバルの踏み出しを見逃さない。ほぼ同時にスパートしたが、最高速度への切り替えは相手が圧倒的に上だった。猛追及ばず2位。その差は前輪1個分でも「完全な力負け」と認めるしかなかった。

当時は五輪まで半年。自国開催の大舞台での結果にこだわるため、脇本とベトゥは苦渋の決断を強いられた。「半年で差は埋まらない。どうすれば集団でラブレイセンを不利な状況に落とせるか。(実力勝負でなく)作戦を考える」。そう言い聞かせて調整に入った3月下旬、今度は五輪の1年延期が決まった。

もともと今夏を最後に本業の競輪に専念するつもりだったから、心はまたぐらりと揺れた。「ラブレイセンは若くてどんどん強くなるけれど、僕は落ちていくのでは」

そんな負のスパイラルから脇本を引き戻したのは、「おまえの理想さえ突き詰めれば絶対勝てる。1年あればできる」というベトゥの一言。過去に何度も有言実行を果たし、未来を切り開いてくれた金言を信じて再びペダルを踏み出した。=敬称略

(鱸正人)

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