米、TikTok排除へ3手段 「禁止」「売却」「禁輸」判断

2020/8/3 5:00
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トランプ米政権は「TikTok(ティックトック)」排除の圧力をかける=ロイター

トランプ米政権は「TikTok(ティックトック)」排除の圧力をかける=ロイター

【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権が、中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」事業の排除に動く。米国子会社の強制売却も含めて3つの法的手段を検討。世界最大のユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場企業)であるバイトダンスは、成長源の米国事業の存続が困難になった。

ムニューシン財務長官は2日、米テレビ番組で「ティックトックは現状のままでは存続させない。利用禁止か、売却するかだ」と主張した。中国に米利用者の個人情報が流出すると懸念し、具体策をトランプ大統領と協議する。トランプ氏は7月31日に「利用を禁止する」と踏み込んでおり、具体策として大統領令や安全保障上の脅威に対応するための「国際緊急経済権限法」の適用などを挙げる。

米当局はティックトックの排除へ様々な手段を検討している。ムニューシン氏は、外国企業の米国投資を審査する「対米外国投資委員会(CFIUS)」を使ってティックトックの米事業を切り離す考えを示唆している。

バイトダンスは2017年に米動画投稿サイト「ミュージカリー」を買収し、米南部バージニア州ではデータセンターも運営する。いすれもCFIUSの審査対象で、個人情報の収集が「安全保障上の問題がある」と判断すれば、米国事業の切り離しを大統領に勧告できる。

中国勢のオンライン事業をCFIUSが排除した例は既にある。ゲーム会社、北京崑崙万維科技は3月、CFIUSの要求を受けて、16年に買収した米出会い系アプリ「グラインダー」を投資会社に売却した。グラインダーは同性愛者用のサービスで、エイズウイルス(HIV)の陽性の有無など極めて重要な個人情報を蓄積していた。

利用そのものの禁止を主張するトランプ氏が言及した「国際緊急経済権限法」は、非常事態を宣言した上で特定の外国企業との取引を禁じる強力な措置だ。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)のように、米商務省がバイトダンスに禁輸措置を発動する可能性もある。バイトダンスは米企業と取引ができなくなり、アップルやグーグルなどを通じたアプリのダウンロードができなくなる可能性がある。

ただ「国際緊急経済権限法」は大規模テロなどの対抗措置を想定したもので、ティックトックの狙い撃ちは権限逸脱と受け止められかねない。商務省の禁輸措置も本来の目的は米国の重要技術の流出を防ぐことで、ティックトックの「ダウンロードの禁止」がその目的に合致するかグレーだ。

「成人の米国人なら、中国に個人情報を盗み取られていると思った方がいい」。7月初旬、レイ米連邦捜査局(FBI)長官は講演でそう断言した。2月には米司法省が中国人民解放軍のハッカー4人を起訴したが、その攻撃で1億5000万人もの米国人の個人情報が流出した。ティックトックのような消費者サービスにも包囲網を広げるのは「中国の知的財産の窃取は、対政府、対企業に限ったものではない」(レイ長官)ためだ。

中国当局はそもそも、グーグルなど米国発のオンラインサービスの利用を制限しており、米国の措置に反論できる余地は乏しい。トランプ政権は中国当局の報復措置にも限界があるとみる。

懸念はむしろ6500万人規模とされる米国内のティックトック利用者の反発だ。SNS(交流サイト)のユーザーの団結力は強く、利用禁止措置が反政権運動につながるリスクもある。

実際、トランプ陣営にはティックトックに苦い思いもある。6月にオクラホマ州で久しぶりの選挙集会を開いたところ「100万人が申し込んでいる」(トランプ氏)はずが、空席だらけとなった。リベラル系のティックトックのユーザーが大量のボイコットを働きかけたためとされ、陣営幹部の更迭にまでつながった。

ティックトック脅威論の根底には、米国勢の独壇場だった消費者向けのオンライン事業に、中国勢が突如割って入った衝撃がある。バイトダンスの企業価値は1400億ドル(約15兆円)と、今や世界最大のユニコーンだ。米マイクロソフトにティックトックの米事業を売却する可能性もあり、バイトダンスは成長戦略を大幅に見直さざるをえない。

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