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アスリートの新常態、発信力でコロナ禍を生き抜く

2020/8/4 3:00
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桃田(右下)は地元香川県の子供たちとオンライン上で交流した(UDN SPORTS提供)

桃田(右下)は地元香川県の子供たちとオンライン上で交流した(UDN SPORTS提供)

新型コロナウイルス感染拡大の影響でスポーツ活動が制限される中、SNS(交流サイト)や動画投稿サイト「ユーチューブ」などオンラインツールを活用して自身の近況を発信したり、ファンと交流したりするアスリートが増えている。他競技の選手と連帯して一つのプロジェクトを行うなどオンライン上の輪も徐々に広がっており、新たなムーブメントとして定着しそうだ。

「きつくないよね? 休まないよー」

バドミントン女子シングルス日本代表の奥原希望(太陽ホールディングス)が5月に開設したユーチューブチャンネル「のんちゃんねる」には、毎週のように新しい動画がアップロードされる。自身の持ち味であるフットワークを解説したり、自宅でのトレーニング方法を紹介したり。数万回のアクセスは当たり前で、総合格闘家の朝倉未来(トライフォース赤坂)とのコラボレーション動画が再生数110万回以上と「バズった」こともあった。

もともと、ツイッターやインスタグラムに試合の振り返りなどを積極的に投稿していたものの、「文章だとどうしても伝えづらい部分があった。動画もやりたいと思ってタイミングを見計らっていた」と奥原は明かす。コロナの影響でワールドツアーなど大会が軒並み中止となり、時間ができたことがくしくも背中を押した形。「今までファンと交流する時間がなかなかできなかった。この場をもっと積極的に使っていきたい」と配信に手応えを感じている。

奥原は動画配信を「もっと積極的に使っていきたい」と話す

奥原は動画配信を「もっと積極的に使っていきたい」と話す

4月の緊急事態宣言を境に各競技の大会が続々とキャンセルになるなど、スポーツ界は未曽有の危機に直面している。そんな中、活躍の場を失う事態にあらがうかのように、オンライン上で積極的に自分の思いや技術を「発信」し、ファンと交流する選手が目立ち始めた。

インスタグラム上のライブ配信「インスタライブ」や、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などツールは様々。奥原のユーチューブのように、競技の垣根を越えたコラボレーションも盛り上がりを見せる。

奥原や競泳日本代表の塩浦慎理(イトマン東進)らトップアスリートのコンテンツ支援を行うRevive(神奈川県鎌倉市)の前田真郷社長は「自分を見せる場所を失い、代わりにSNSなどを駆使して工夫して届けようとする選手は確実に増えた。ファンから直接コメントが届くなど交流が増えることで、(発信する)やりがいを感じた人も多かったのでは」と話す。

コロナ禍で苦しむ人々に少しでも寄り添おうと、アスリートたちが連帯してオンラインプロジェクトに取り組む動きもある。サッカー元日本代表の香川真司(サラゴサ)やバドミントン日本代表の桃田賢斗(NTT東日本)らが所属するマネジメント会社「UDN SPORTS」が4~5月に実施したオンラインイベントもその一つだ。

「#つなぐ」と題したプロジェクトには香川をはじめ多くの所属選手が参加。桃田がインスタライブでファンからの質問に答えたほか、サッカー女子日本代表の長谷川唯(日テレ)は子どもたち数人とオンライン上で対談した。UDNの担当者は「もともとファンとの触れ合いを大事にしており、コロナをきっかけに新しい試みとして行った。海外にいても物理的距離を乗り越えて交流する選択肢ができたし、選手にとっても前向きな思いになれた」と振り返る。

オンラインで意見交換するJOCアスリート委員長の沢野(下)と選手ら(ユーチューブから)=共同

オンラインで意見交換するJOCアスリート委員長の沢野(下)と選手ら(ユーチューブから)=共同

日本オリンピック委員会(JOC)のアスリート委員会が手掛けたのは社会への発信プロジェクト「#いまスポーツにできること」。緊急事態宣言下で多くの選手が子どもたちへのメッセージや医療関係者への感謝をSNSに投稿した。委員長を務める陸上男子棒高跳びの沢野大地(富士通)によれば「アスリートだから持つ発信力で、できることをやっていこうという思いから生まれた」。フィギュアスケートの羽生結弦(ANA)らトップアスリートが賛同した試みへの反響はかなり大きく、「今後も発信していきたい」と次の案を練っている。

「自分の立場の強みを生かしてできることをやれば、人生の幅を広げてくれる」と前田氏が言うように、スポーツ選手にとってオンライン上で他者とつながることは、新規ファン獲得や地位向上など多くの可能性を秘めている。ただ、こうしたツールを駆使し、自らの活力へと変えられている選手はまだ一部。「どんな発信をすればファンに喜ばれるか、発信した先の未来のイメージができている選手は多くない」と前田氏。苦しい状況が続くコロナ禍の今だからこそ、発信力を武器にすることがアスリートにとっての「ニューノーマル(新常態)」となるのかもしれない。

(堀部遥)

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