米中対立、身近なアプリも TikTok「利用禁止」米検討

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2020/8/1 18:00
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テック産業を巡る米中両国の攻防が新たな局面に入った。トランプ米大統領は7月31日、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の「利用禁止」を打ち出した。ティックトックは中国発の世界的なサービスとして勢いを伸ばしてきただけに、実現すれば中国政府が何らかの対抗策を打ち出す可能性がある。

米トランプ政権は8月1日にも「ティックトック禁止令」の具体策を公表する見通し。ムニューシン財務長官は、外国勢による米国投資の可否を判断する対米外国投資委員会(CFIUS)が、ティックトックを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の米国事業を審査していると明らかにしている。

バイトダンスは米バージニア州でデータセンターを運営する。17年には米動画アプリ運営の「ミュージカリー」を買収した。いずれもCFIUSの審査対象で、個人情報の収集などを「安全保障上の問題がある」と判断すれば、米国事業を切り離すよう大統領に勧告できるとみられる。

「エンティティー・リスト」に加えた華為技術(ファーウェイ)のように米商務省がバイトダンスに「禁輸」措置を発動する可能性もある。禁輸措置が発動されると、バイトダンスは米企業と取引ができなくなる。米国内のスマートフォンでティックトックのアプリが使えなくなり、利用禁止措置と同じ効果がある。

8月1日の現地報道によると、バイトダンスは当初、経営への影響力を残せる少数株の保有を探ったが、ホワイトハウスの反対を受け米国事業から手を引くという。トランプ氏は7月31日、米企業によるティックトック買収を支持しない考えを示したが、利用禁止はバイトダンスに早期妥結を求める圧力の可能性がある。

米政権がティックトックを問題視する背景には、安全保障の問題に加えて、中国企業ながら米国で急速に存在感を強める姿への警戒感もある。米IT企業の独壇場だった消費者向けネットサービスに割って入り、若者世代から強い支持を受ける。

15秒ほどの短い動画を作成して投稿できるサービスで世界で100カ国以上、約8億人が利用している。米センサータワーの調査では、6月のグーグルプレイとアップストアでのダウンロード数は8700万回超と世界1位(ゲームアプリを除く)。

米調査会社CBインサイツによると、バイトダンスの企業価値は約1400億ドル(約15兆円)。世界最大のユニコーン(企業価値10億ドルを超える未上場企業)だ。

サービスの普及で利用者が増えれば増えるほど、中国当局にデータを把握される懸念が高まる。米軍は早々にティックトックの利用をほぼ全面的に禁じている。

中国側は1日夕方時点で公式な声明を出していない。中国外務省の報道官は7月29日に「(ティックトックについて)米国の議員は事実ではない批判を繰り返し、中国に悪意を向けている」と米国に反発していた。

ただ中国はすでに米国発のフェイスブックやユーチューブ、グーグルの検索サービスの国内利用を厳しく制限しており、ネット分野での対抗策には限界もある。

バイトダンスの関係者は「海外での事業環境が目まぐるしく変化しており、様々な選択肢を検討している最中だ」と明かす。

対立がエスカレートする可能性もある。米国では、対中強硬派のナバロ大統領補佐官が、中国の騰訊控股(テンセント)が提供する対話アプリ「微信(ウィーチャット)にも断固たる措置を検討している」と明言する。

ウィーチャットは世界で12億人の利用者を抱える。決済や電子商取引(EC)など様々な機能を持つ「スーパーアプリ」だ。米国務省のキース・クラック次官(経済成長・エネルギー・環境担当)も日本経済新聞などのインタビューで「子どもたちがスパイ活動をされる可能性があり非常に危険だ」と述べた。

利用者は中国人が中心とはいえ、ティックトックと同じように米国内での利用が禁止されれば、影響は大きい。

中国ではファーウェイが米国による制裁対象となった際、米アップル製品の不買運動が起きた。中国でサービスを提供している米企業に対して、中国が一段と締め付けを強めるなど負の連鎖が広がる恐れがある。

ITサービスの利点は国境に関係なく利用できることだが、米国と中国という巨大市場で二分化が進みかねない。米政権がティックトックやウィーチャットを排除すれば、同盟関係にある日本や欧州勢も追随を求められる可能性がある。(ワシントン=河浪武史、上海=松田直樹、渡辺直樹)

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