米、週150億ドル消失リスク 失業給付の加算が期限切れ

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経済
北米
2020/8/1 13:15
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【ワシントン=河浪武史】米国経済を下支えしてきた失業給付が大幅に減額されそうだ。7月31日、2500万人に週150億ドル(約1.5兆円)を支給する新型コロナウイルス対策の特例措置が終了した。延長を検討してきた米議会は、与野党の対立で関連法案を可決できなかった。米議会は早期の法案通過をなお目指すが、特例の延長そのものが宙に浮き、個人消費を強く冷やす懸念もある。

ペロシ下院議長ら民主党指導部と31日会談したムニューシン財務長官らは、失業給付の特例延長で合意できなかった。米政権は3月下旬に、新型コロナ対策として失業給付を週600ドル加算する特例措置を発動、その期限が7月31日までだった。

トランプ大統領は31日、記者団に対して「民主党は政治ゲームに明け暮れている」と野党を批判し、民主党も「検査対策など包括法案が必要だ」(シューマー上院院内総務)と譲らない。ホワイトハウスと議会はなお制度の延長を模索しており、週末を返上して1日も合意案を巡って協議する。米上下両院は議会審議を8月7日で終了し、それ以降は夏季休暇に入る予定だった。休会を先延ばしして協議を続ける可能性がある。

景気への影響は延長法案が早期に可決できるかで大きく変わる。コロナ危機下のさらなる収入減は短期でも打撃となる。危機前の失業給付は平均で週370ドル程度だった。コロナ特例による週600ドルの上乗せで、失職者には同1000ドル近い収入があった。2500万人前後が受給しているとされ、合算すればその規模は週150億ドルにもなる。米国全体の家計所得は週3700億ドル程度。その4%分に相当する巨大な「特例収入」が突然失われることになる。

家賃の支払いなどができなくなって、連鎖的に景気を下押しするリスクもある。7月25日には、連邦政府住宅などに住む世帯の特別支援の期限が切れた。家賃を延滞しても強制退去させない支援措置だった。失業対策と住居支援が同時に消えれば、家を失う世帯が急増しかねない。

米ラスベガスで失業給付の申請に並ぶ人々(3月)=AP

米ラスベガスで失業給付の申請に並ぶ人々(3月)=AP

共和党は失業給付の特例延長を認めるものの、加算支給額を週600ドルから同200ドルに減額すると主張する。緊急措置的な失業給付の「大盤振る舞い」で、受給者の7割が以前の給与を上回る額を受け取っているとされるためだ。一方で弱者保護を優先する民主党は、加算額を週600ドルのまま維持するよう求めており、合意点が見いだせていない。

11月の大統領選・連邦議会選が近づき、与野党とも簡単に妥協できなくなっている。共和党は、支持基盤の保守層が建国以来の「小さな政府」や「自助努力」を訴えており、そもそも失業給付の特例加算に反対だ。民主党は5月に3兆ドルの追加経済対策を提案し、地盤であるニューヨークやカリフォルニアなど、財政悪化が目立つ州・地方を救済する案を掲げている。

最悪のシナリオは、与野党の対立で延長法案そのものが宙に浮いて、失業給付の特例が完全に消滅するケースだ。米経済は4~6月期に前期比年率換算で32.9%減というマイナス成長を記録した。7~9月期はプラス成長に回復するが、新型コロナの感染再拡大で、個人消費は「6月後半から持ち直しが鈍化している」(米連邦準備理事会のパウエル議長)。公的支援が突如なくなる「財政の崖」まで発生すれば、景気は再び失速しかねない。

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