広島アンデルセン、「食卓に幸せ」被爆建物で受け継ぐ

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2020/8/1 2:00
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東側2階部分の一部に被爆壁を取り付けた

東側2階部分の一部に被爆壁を取り付けた

ベーカリーを手掛けるアンデルセングループ(広島市)の主力店「広島アンデルセン」が8月1日、リニューアルオープンする。創業者の高木俊介・彬子夫妻が街の小さなパン屋を開いたのは、戦後まもない1948年のこの日。創業以来、「食卓に幸せを運ぶ」という志を受け継いできた。装いは新たになるが、72年間変わらない思いを被爆建物としての歴史的な使命と共に次の世代につなぐ。

■こだわりのパン

1階のベーカリーフロアには多種類のパンが並ぶ

1階のベーカリーフロアには多種類のパンが並ぶ

地上5階建ての新店舗でひときわ開放感にあふれるのは、1階のベーカリーフロアだ。アンデルセングループの代名詞ともいえるデニュッシュに加え、自家製の発酵種で焼き上げた「the Bread(ザ・ブレッド)」といったパンが香ばしい匂いを漂わす。パンとの相性を考えて選び抜かれたチーズやスイーツ、ワインなども多く並ぶ。

2階のレストランでは、広島アンデルセンのパンを様々な料理と共に楽しめる。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、当面の営業はデリバリーやテークアウトのみ。自宅やオフィスで店の味を楽しんでもらおうと、ハンバーグステーキやクラブハウスサンドなどシェフが腕によりをかけた料理を提供する。

■被爆建物受け継ぐ

被爆壁の保存に関するプレートも設置した

被爆壁の保存に関するプレートも設置した

リニューアルまでの約4年半、道のりは長かった。建て替え前の旧店舗での営業を終えたのは16年1月。そこから約2年もの歳月をかけて検討されたのは、被爆建物としての保存のあり方だった。

旧店舗はもともと1925年に建築された旧帝国銀行の建物。原爆投下時には爆心地から360メートルという至近距離に立地しながらも、爆風に耐えた被爆建物として知られている。

67年に建物を買い取った高木夫妻は、同時期にローマの菓子メーカーが歴史ある建造物の中で商いをしている様子を目の当たりにした。古いものを生かし、その中から新しいものを生み出す――。パンのある豊かな暮らしを提案する舞台として、被爆建物を活用することを選んだ。

街のにぎわいづくりに貢献しながらも、原爆投下から年月がたつごとに「もの言わぬ証人」としての重要性は社会的にも高まっていた。ただ、竣工から約100年が経過した建物は老朽化の問題にも直面。耐久性や保存方法などを専門家と協議を重ねた上で出した結論は、約50平方メートル分の被爆壁を切り取り、新店舗に取り付けることだった。

耐震性の問題から全てを残せなかったことに、もどかしさを抱えているのはアンデルセングループも広島市民も同じだ。ただ、多くの人が行き交う本通商店街で唯一の被爆建物としての登録は守れた。

広島アンデルセンの畠山裕子店長は「被爆建物を使い続けることは、広島で生きていくことの象徴」と話す。店を訪れた人がにぎやかな時を過ごせるようにすることも、平和を伝える一つのあり方なのかもしれない。

(田口翔一朗)

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