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早期退職組に学ぶ ショックに負けない資産運用術

アフターコロナのアーリーリタイア戦略(上)

写真はイメージ=PIXTA

株式投資などで経済的な自立を手に入れて早期に会社を辞め、仕事に縛られない生き方を目指す「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」。米国で火が付いたFIREブームが日本でも広がりを見せ、アーリーリタイアを目指す個人投資家が増える中、コロナショックを機に投資環境が一変した。コロナ後の新しい社会・経済環境で、これまでの早期リタイアプランは通用するのか。アフターコロナの新しいリタイア戦略を2回にわたり考える。今回はコロナ前に早期退職に踏み切った2人の個人投資家が、コロナショックをどう乗り越えたかを紹介する。

辞めていたからこそリバウンドを取れた

エルさん(ハンドルネーム)は2019年1月に会社を辞めて完全リタイア生活に入った。会社員の妻の収入もあるが、子供2人を含む家族の暮らしを支える主な収入源は資産の運用益。その資産は成長株投資で築いた。

実はリタイアする前、給与が途絶えることを考えて配当株投資へとかじを切った時期がある。ところが退職直前に投資先の米たばこ株が急落、投資人生最大の損失を被ってしまった。

結局、配当重視の運用ではなく、日米の個別株投資を中心とした機動的な運用をリタイア後も続けている。しかも現金比率はできるだけ抑えたフルインベストメントという攻めの投資姿勢だ。

19年、エルさんは好調だった日本株市場に資金を移していた。当時、保有する米個別株は4銘柄。米株に資金を戻そうとする矢先にコロナショックがやって来た。

資産が一番減ったのは3月19日。年初来24%のマイナスだ。「幾度もショックを経験しているので、何とかなるとは思っていたが、調整の速度には正直、驚いた」

しかし落ちる株価を眺めていただけではない。暴落したREITを、信用取引を使って買い、上がったところで売却。その資金ですぐに米個別株に投資した。買ったのは、高配当銘柄、割安感のある銘柄など。「結果的にディフェンシブな生活必需品関連銘柄が多く、安い時期に仕込めたと考えている」

コロナ後の投資環境には特に不安はなく、投資スタイルを変えるつもりもないという。「今回は短期で対応した売買もあったが、基本は中長期的で有望だと思える企業に投資している。コロナで社会が変わっても、優れた企業の経営者がうまく対応してくれると信じている。そもそも保守的に考え過ぎると投資でリタイアなんかできない」

むしろ混乱する社会を眺め、コロナ前に辞めてよかったという思いも強めているという。「もし勤めていたら在宅ワークや業績悪化、賞与減などに心をすり減らしていたと思う。仕事を続けていたら機動的な対応もできなかった。リタイアしていてよかったと思う」

下落幅は想定以下運用方針に自信

1年半前にセミリタイアを実行した九条さん(ハンドルネーム)。前職の仕事を手伝っている関係で多少の収入はあるが、基本はリタイア前に築いた資産の運用益で暮らしていく予定だ。

主な運用先は米国上場の株・債券のETF。この他に米個別株や金、仮想通貨、太陽光発電所などにも投資しており、かなり分散を効かせている。そして全資産の3割は現金として手元に残している。

コロナショックでは当然、影響を受けた。ダウ工業株30種平均が1000ドル単位で暴落していた3月中旬、九条さんの資産も急減する。だが、「あの時は買い場が来たとしか思えなかった。恐怖感はゼロ。むしろお祭り気分で、どこまで落ちるのか見てみたいという気持ちが強かった」という。

S&P500種株価指数が大底を付けた後、九条さんは総資産の2%相当の現金で全世界株ETF(VT)を新たに買い付ける。本当はもっと買いたかったが、指し値が通らず、あっという間に株価が戻ってしまい買い逃してしまった。

見ると怖くなったり、何かしたくなったりするという理由で、資産状況をチェックするのは月末だけ。そのため、3月の大底でいくら資産が減ったかは分からないが、3月末の総資産は前月比5.2%減、年初来でも約1割減にとどまった。

「株に100%投資していたリーマン・ショック時、資産は最大4割減った。当時に比べ今の資産構成は下げに強く、資産分散の重要性を強く感じた」という。ただ、大底からの反転は取れなかった。良くも悪くも守りの資産構成だ。

ショックというチャンスを生かせなかった気持ちもある一方、「80歳まで生きるならあと4回くらいはショックがあるだろうし、そのたびに上げ下げを経験することになる。短期目線で過度に警戒したり期待したりしてドタバタしても仕方ない。むしろ今回の急落でもほとんど影響を受けなかった自分の資産配分に自信を持てた」と話す。

長期的な資産運用について心配しているのはインフレやドル安、日本円の暴落など。杞憂(きゆう)かもしれないと思うが、それらのリスクに対応する意味でも「資産分散が大切」と考えている。

(本間健司)

[日経マネー2020年9月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年9月号 仕込むなら今! 次世代10倍株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/7/21)
価格 : 750円(税込み)

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