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神戸のバウムクーヘン 無添加追求、重ねた年輪

匠と巧

専用の機械の中を回るバウムクーヘンを職人が形を整えながら焼き上げる=松浦弘昌撮影

洋菓子のユーハイム(神戸市)が3月に「純正自然」との宣言を発した。看板商品のバウムクーヘンで周りをコーティングするチョコから乳化剤を除き、無添加を実現。多くの品で酸味料や酸化防止剤などの食品添加物をなくした。モットーの「母が子どものためにつくるお菓子」の裏には職人のこだわりと素材メーカーとの共同研究、そして自社での機械づくりがある。

ユーハイムは1909年にドイツ人のカール・ユーハイムが中国・青島で菓子店を開いたことに始まる。第1次世界大戦中に捕虜として日本に連れてこられ、同社によると、19年に広島で日本で初めてバウムクーヘンを焼いたという。日本永住を決意した22年、横浜で日本1号店を開業。関東大震災からの難を逃れて23年、神戸に移った。

バウムクーヘンは同社を代表する品で、材料から製法、形に至るまで秘伝のレシピに細かな記述がある。製造の過程で添加物を使ってはならないとも記され、レシピに合った機械を自前で製造し、菓子づくりに生かしている。

「既製の機械では添加物がないと焼き具合にムラが出て、ロスも多くなる」と河本英雄社長。自然由来の素材を扱うには機械の日々の微調整やメンテナンスも欠かせない。専門の機械工がいるのも同社の強みだ。

ただ事業を拡大させた戦後の高度成長期にバウムクーヘン以外で添加物を使った商品は増えていった。「高度成長を支えたのは大量生産、大量消費。添加物があれば、おいしいお菓子ができる。当時は欠かせないものだった」(河本社長)

素材の味が分かる、シンプルなおいしさがドイツ菓子の良さで、ユーハイムの原点もここにある。その原点から次第に離れていくなか、69年に河本社長の祖父で先々代の春男氏が始めたのが「純正自然」の活動だった。無添加を求めて素材や製法、機械を見直した。

食用油脂のショートニングをバターに替え、膨張剤のベーキングパウダーの使用をやめた。果物のジャムからゲル化剤を、生クリームからは乳化剤を省いた。

同社のバウムクーヘンの特徴であるコーティングチョコに使われていた乳化剤の不使用にも挑んだ。実は、秘伝のレシピがうたう無添加はチョコにもともと入っていた乳化剤を見逃していた。乳化剤を除くのは前例がないと、チョコメーカーは困惑していたという。

乳化剤の不使用は決して不可能ではないが、大量生産に向いているわけではない。製法を見直し、機械を調整しては、また素材をつくり変える。約7年に及ぶ試行錯誤の末、菓子職人と素材メーカー、機械工の三位一体が織りなす独自の技術が確立された。

ユーハイムは全国に約290店を展開し、1日に約3万個(1個200グラム換算)のバウムクーヘンをつくる。無添加の品はバウムクーヘンだけでなく、ショートケーキやクッキーなどにも広がり、売上高の8割強を占めるまでになった。100%への闘いは続く。

(小嶋誠治)

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